一匹狼の回顧録

30代の孤独な勤め人がストレスフリーな人生を考える

スタートライン

社会人1年目の冬、僕は変わりつつあった。

 

心の中から悩みを追い出すために、いつもこう自分に言い聞かせた。

 

忙しい状態でいること。悩みをかかえた人間は、絶望感に負けないために、身を粉にして活動しなければならない。

 

それから約1年、馬車馬のように働いた。

それまでの僕はまだまだ忙しさが中途半端だったのである。

 

 

朝起きて、身支度をしながら、英語のリスニングをした。

 

朝は7時半に出社した。

まだ空いている通勤電車は、心地よかった。

まだ外は暗かった。車窓から朝日を眺めた。

 

時間ギリギリに出勤していた頃の電車に比べ、意識の高そうなサラリーマンが多い気がした。

スキマの時間で、法律・経済・マネジメントなどの本を読んだ。

当時ちんぷんかんぷんだった内容も、意外とこの歳になってわかってきたりする。

気分を変えたいときは数学の問題を解いたりした。

 

 

職場では、うつ気味の先輩の仕事を自ら奪い取り、

他所管・他グループとの三遊間業務を積極的に拾いに行った。

初めは、みんな驚いていた。

 

会社を出るのはいつも22時過ぎだった。

帰り道も本を読んだ。

疲れてきたら、英語のリスニングに切り替え、限界になったら目をつむった。

週末に飲みにいくこともなかった。

 

不思議なもので、ここまで仕事漬けになると、カーネギーの言うとおり、忙しすぎて悩む暇などないのである。

 

だんだんと仕事が楽しくなってくる。

きっと、仕事が楽しいから没頭したのではなく、没頭したから仕事が楽しくなっていったのだと思う。

 

職場で声をかけてくれる先輩が増えた。

新しい仕事がどんどん目の前に積まれていった。

叱られることも多々あったけど、自分の判断で情報を発信したりもした。

 

土日はエクセル・アクセスのスキルを磨いた。

空いた時間で本を読んだ。

若い頃読書で得た知識は財産となる。

太らないよう、散歩やジョギングをし、筋トレをした。

 

 

この頃、女性には全く興味が湧かなかった。

仕事で自身が日に日に成長するのが肌に感じられたからだ。

 

こんな生活を約一年続けた。

 

だんだんと、毎日泣いていた僕とは違う僕になってきた実感があった。

知識と経験を積み重ねていった。

 

やっと、社会人としてスタートラインに立てたと思ったのが、社会人2年目の晩秋である。

プライベートを充実させてもいい頃だ、と思い始めた頃である。

 

--------------------------------------------

<回顧してみる>

自分が社会人になって、というか今まで生きてきた中で、一番成長を感じた充実した時期であった。

とにかく会社の同期や大学の友人との遅れを取り戻したい気持ちで必死で働いた一年だった(今でこそ、他人と比べることに価値を見いだせなくなったけれど、当時は人一倍他人と比べて自分がどうなのかが気になる人間であった)。

働き方改革が叫ばれて久しいが、当時は労働時間は無制限だったので(タイムカードは自己申告)、好きなだけ働くことができた。

考え方は人それぞれだと思うけど、人生で一度くらい、もうこれ以上働けないと言えるくらい働く時期があってもいいと思う。

僕はたまたまそれが新入社員時代だっただけで。仕事の能力はまだまだ半人前だったけれど、この時期に養った「我慢強さ」とか「折れない心」はその後の人生にとても役立っている。

仕事だけじゃない。「我慢強さ」も「折れない心」も恋愛スキルとして必須ではないだろうか。