今日からは、悩みを分析する基礎技術を学ぶ。
以前紹介したウィリス・H・キャリア氏の悩みを解決する公式をもってして、悩みの問題はすべて解決できるかというと、もちろんそんなわけがない。
悩みに対処するための準備として、問題を三段階に分けて分析することを学ぼう。
三段階とはすなわち、
1.事実の把握
2.事実の分析
3.決断──そして実行
である。
まず、第一の「事実の把握」を取り上げてみる。事実を把握するということが、なぜ大切かというと、事実を知らなければ、自分の問題を解決することは不可能だからだ。
だが、本書で言及されているとおり、われわれが陥りがちなのは、既に考えていることに合致する事実ばかりを探しまわってしまうことである。よく言われる「確証バイアス」というものである。
そこで、問題を客観的態度で眺めるのに役立つアイディアを紹介しておく。
①事実を把握しようとする場合に、情報集めは自分のためではなく、誰か他人のためなのだと思うようにする。こうすると、事実に対して冷静かつ公平な観察がしやすくなり、感情を取り除くことができる。
②自分を悩ませている問題について事実を集めている間は、自分を自分の反対側に立って反論しようとしている弁護士とみなし、反論を加える準備をしているつもりになる。つまり、自分自身に不利な事実のすべて、直面したくない事実のすべてを把握するように努める。
③自分の言い分と相手方の言い分とを書きとめてみる。
すると、たいていの場合は、妥当な点が両極端の間の、どのあたりにあるかがわかってくる。問題を解決するための第一歩は、事実の把握にあるのだ。
第二に、「事実の分析」である。事実をすべて集めたとしても、それを分析、解明しなければ何の役にも立たない。 そして、第三の欠くべからざる法則「決断」と「実行」が必要である。行動でもって示さなければ、事実の把握も分析もすべてエネルギーの浪費でしかなかろう。
次の段階を踏めば、悩みの九割を追い払うことができるとカーネギーは言う。
1.悩んでいる事柄を詳しく書き記す。
2.それについて自分にできることを書き記す。
3.どうするかを決断する。
4.その決断を直ちに実行する。
応用心理学の祖、ウィリアム・ジェイムズ氏はこう言っている。
「ひとたび決断を下し、あとは実行あるのみとなったら、その結果に対する責任や心配を完全に捨て去ろう」
要するに、事実に基づいて慎重に決断したならば、行動に移れということだ。
オクラホマ州きっての石油業者として知られたウェイト・フィリップス氏に対して、カーネギーがどのようにして決断を実行に移すのかと質問したことがある。彼はこう答えた。
「私が思うに、問題をある限度以上に考え続けると、混乱や不安が生じやすい。それ以上調べたり考えたりすれば、かえって有害となる時機がある。それが決断をし、実行し、そして絶対に振り向いてはならない時機なのだ」
個人的に、自分が直面する問題については、いつまでも際限なく調べてしまう傾向にあるので、このことは肝に命じておきたいと思う。
<悩みの分析と解消法>
◉第一問──私は何を悩んでいるか?
◉第二問──それに対して私は何ができるか?
◉第三問──私はどういうことを実行しようとしているか?
◉第四問──私はそれをいつから実行しようとしているか?
おしまい