一匹狼の回顧録

30代の孤独な勤め人がストレスフリーな人生を考える

書評『北朝鮮脱出』姜哲煥・安赫

今日紹介するのは、僕が大ファンである不動産投資家の加藤ひろゆきさんが以前Voicyで紹介されていたこちらの本。

 

北朝鮮脱出』
★★★★☆

 

既に絶版になっており、アマゾンやブックオフで中古品を購入するしか入手する方法はありません。

 

本書は、北朝鮮から中国経由で韓国に脱北した2名の青年の話です。時代は1980年代の話なので、今とは少し時代背景が違うかもしれません。

著者の一人、姜哲煥は、9歳の時に日本からの帰国者の祖父がある日突然いなくなったと思ったら、「わが民族と祖国にぬぐい去ることのできない罪を犯した」とされ、家族とともにある日突然ヨドク政治犯収容所に収容されます。 

もう一人の著者である安赫は、裕福な家の息子で、好奇心に駆られて遊び仲間と共に中国に入り、そのまま数ヶ月間暮らした後に北朝鮮に帰国。何をトチ狂ったか自ら自首しに行き、間もなくスパイ容疑で逮捕されます。ちょっと頭が弱い・・。

前者は、まさしく事実無実の罪で投獄され、祖父ものちに無実を匂わせる描写があります(それによって本人も釈放された模様)。

後者は勝手に中国に行き、勝手に自首して収容されるという自業自得な面ありで、やや同情に欠けます。

 

上巻の副題(「地獄の政治犯収容所」)のとおり、とにかく北朝鮮強制収容所の筆舌に尽くし難いほどの劣悪な環境がわかる本です。それ以上でもそれ以下でもありません。

特に、たびたび出てくる非道の限りを尽くした拷問と飢えを凌ぐために様々な虫を捕まえて食べる描写がショッキングです。

 

まあ、この本の正しい使い方は、「日本に生まれただけで勝ち」という事実を再認識することでしょう。

われわれは、実にちっぽけなことで毎日怒ったり悲しんだり悩んだりしていますが、この本を読んだらそのうちの99.9%は吹っ飛ぶはずです。

まさしく「下を見ればきりがないが、上を見るとすぐ天井」なのが日本なのです。

 

にしても彼らの知り合いの15号収容者(ヨドク政治犯収容所に収容された者たちの呼称)が釈放後に次々と再収容されていく中で、「自分たちも時間の問題」と悟るや否や、実際に行動し、そして脱北しちゃう行動力がすごいです。そこで動かなかったら、彼らも再収容され、二度と出てこれなかったでしょうね。

前述のとおり、安赫さんの方は若干頭が弱いんですが、釈放後も周囲からの差別により社会に馴染めず、家族も崩壊していく中で、「何がなんでも国家に復讐してやろう」という決意が芽生えていく過程に心を揺さぶられるものがありました。

そして、捕まった瞬間人生ゲームオーバーというまさしく命がけの賭けに出て、安赫の昔のヤクザ仲間の支援もあり(このシーンはちょっと感動)、見事に国境の川を渡り切るんですね。

 

ワタクシも何がなんでも今の勤め先に復讐しないといけないので、表向きは従順な社畜をよそほいつつ、甘い汁は吸いながら、自分のビジネスをコツコツ作っていきたい思いました。良作です。

 

おしまい