第1章 日本型雇用のルール
2.あなたの給料はどのように決まるのか
まず、はじめに、日本型企業(以下、日系企業)に勤めるサラリーマンの給料の決まり方について書いてみようと思う。
多くの人は、今の自分の仕事について「しんどい」「キツい」と思っているのではないだろうか。
仮に、年収が300万だろうと500万だろうと1000万だろうと、しんどい人は給料がいくら上がってもそのしんどい状態から抜け出すことができない構造になっている。
一方、あなたがもし日系企業(特に、ある程度の規模以上)にお勤めなら、朝から晩までまったく仕事をしないのに、あなたよりはるかに高い給料をもらっているおじさん(俗に言う窓際族)はいないだろうか? 僕が、今の勤め先に入社して何より衝撃を受けたのが、この窓際族である。朝9時ギリギリに会社に来て、1日の半分くらいをネットサーフィンをして過ごし、18時ピッタリにパソコンをシャットダウンして帰宅。もう定年も近いので、部長も彼には何も言えない(大学の体育会方式で、1日でも早く入社した人間がエラいとされる文化なのだ・・)。
馬車馬のように一生懸命働いているのにいつまでもしんどいあなたと何もしないのにあなたの倍以上の給料をもらっている窓際族、このような理不尽が許されるカラクリは、カール・マルクスの『資本論』を読み解いていくと明快に理解できる。なにも企業が思い付きや根拠なき慣習で給料を決めているというわけではなく、そこにはしっかりとした理屈がある。『資本論』は今の日本の資本主義のルールをかなり的確に示してくれている素晴らしい書籍だと自分は考えている。賛否は分かれるところであるが、今のところこれ以上日系企業の仕組みについて明快に説明している物に出会ったことがない。
『資本論』について補足説明。
高校時代に世界史をかじった人であれば、なんとなく記憶にあると思うが、「マルクスって資本主義を否定して社会主義革命を提唱した人物じゃなかったっけ? どうしてそんな人が書いた本が資本主義を採用している日本企業に当てはめることができるの?」 と思ったのではないか。
しかし、そのイメージは間違いである。
マルクスの主張を要約すると、
というものだ。
彼は、革命を起こして資本主義を転覆させるために、徹底的に資本主義を分析し、その制度の限界や労働者の未来について深い考察を行っていたのである。
残念ながら、①に関する考察は素晴らしいものであったが、②の革命については社会主義・共産主義が上手く機能している国家が今日ほとんど見当たらないことから、失敗に終わったと見ていいだろう。
~続く~