一匹狼の回顧録

30代の孤独な勤め人がストレスフリーな人生を考える

【ルート営業の教科書】日本型雇用のルール⑤

第1章 日本型雇用のルール

3.「価値」と「使用価値」

日系企業の給料の決まり方については、マルクスの『資本論』を読み解いていくと明快に理解できると書いた。ここで『資本論』を理解する上で非常に重要なキーワードがあるので紹介しておきたい。

それは「使用価値」と「価値」である。これらの言葉の意味を知らずして、われわれの給料構造を理解することはできない。

 

●「使用価値」とは

まず、理解しやすい「使用価値」という言葉から見ていこう。『資本論』では、「役に立つ」という意味で「使用価値」という言葉が使われている。

たとえば、おにぎりなら空腹を満たすこと、家は寒さ・暑さ・危険から身を守ること、洋服なら自分のセンスをアピールすることなどが使用価値になる。

使用価値を持つのは店で実際に販売されている商品だけではなく、喉が乾いている時に小川に流れている水も価値を持つし、変な話有益な情報を得られた飲み会なども価値を持つということになる。

われわれの日常生活では、この「使用価値」の意味で「価値」という言葉を使うことが多いが『資本論』では「価値」という言葉は全く別の意味で使用されていることに注意が必要だ。

 

●「価値」とは

それでは次に「価値」という言葉について見ていこう。この「価値」という言葉の意味を正確に理解することが、日系企業の「給料構造」を理解するために不可欠である。

資本論』において「価値」は、「どれくらい手間がかかったか」で決まる。

前述の例でいえば、おにぎりに「価値」があるのは、ご飯を炊いて具を中に入れて握るという手間がかかっている。また、家に「価値」があるのは、建築家が設計して、素材メーカーが木材や鉄筋などを加工し、実際に建設業者によって建てられるという手間がかかっている。洋服に「価値」があるのは、デザイナーがデザインをして、誰かが生地を切り、縫い合わせるという手間がかかっている。

そして「価値」の大きさは、「その商品を作るのにかかった手間の総量」で決まる。作るのに1時間かかる商品より10時間かかる商品の方が、1人で作る商品より10人で作る商品の方が手間の総量が大きくなるので「価値が高い」と考えられるのだ。

ここで注意しなければいけないのは、「価値」の大きさは、その商品が役に立つかどうかは無関係ということだ。これは先ほど言ったとおり「使用価値」の大小に関わってくる問題なのだ。

 

・「使用価値」はそれがどれくらい役に立つかで決まる

・「価値」はそれを作る手間の総量で決まる

 

~続く~