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書評『本の「使い方」』出口治明

本日は新年2冊目の書評。本を読むための本(読書本)をご紹介。

 

本の「使い方」

★★★☆☆

 

著者の出口治明氏は京都大学卒業後、日本生命に入社。2006年に同社を退職し、還暦となる2008年にライフネット生命を立ち上げ、現在は立命館アジア太平洋大学(APU)の学長を務めている。著者は無類の読書好きとして知られていて、読んできた本の冊数は1万冊超。池上彰氏や佐藤優氏と並ぶ「知の巨人」だと私は考えている。本書はそんな著者がどのように本と向き合っているのか、本の面白さは何なのか等、「読書論」を語ってくれる本である。

 

<目次>
1章 本とは「何か」―教養について考える(「教養」と「教育」の違い;教養を得るための効率的なツール ほか)
2章 本を「選ぶ」―「おもしろそうな本」という鉄則(未知の分野の勉強のしかた;どうして古典が難しく感じるか ほか)
3章 本と「向き合う」―1行たりとも読み飛ばさない(読書の作法;本は、人 ほか)
4章 本を「使う」―著者に左右される人、されない人(数字・ファクト(事実)・ロジック(論理)
本に即効性を求めない ほか)
5章 本を「愛する」―自分の滋養、他者への架け橋(本との出会い;小学生時代 ほか)

 

著者の主張として特徴的なのは、人間が教養を得るには3つの方法があり、すなわちそれは「人」「本」「旅」の3つから学ぶこと。その中でも、圧倒的に学びの効率が良いのが「本」であるとしている。

人や旅と比較した本のメリットについて以下のとおり述べている。

旅や人と比較しながら、本の優位性について考えてみましょう。僕が考える本のメリットを順不同にあげると、次の5つです。 ①何百年も読み継がれたもの(古典)は当たりはずれが少ない ②コストと時間がかからない ③場所を選ばず、どこでも情報が手に入る ④時間軸と空間軸が圧倒的に広くて深い ⑤実体験にも勝るイメージが得られる

 

その中でも「①古典を読むこと」についてページを割いて非常に熱く語られている。時代の洗礼を受けて残った本は正しいとよく読書家の間では言われていることだが、古典を読み人間がどのような場面でどのような行動をするかを知っておくことで、予期せぬ事態に遭遇した時も軽くやり過ごすことができるのだと。

例えば、こんなエピソードが紹介されている。

誰でも一度くらいは、仕事で足を引っ張られ、悔しい思いをしたことがあるでしょう。そんなとき、人間にできることは、それほど多くはありません。僕たちにできることは、「現実は、小説の世界と同じだな」「あの小説に出てきたように、人間の世界は嫉妬深いんだな」と客観的に物事を捉え、「まぁ、今回は仕方ないな。次回はこの轍を踏まないようにしよう」と自分を落ち着けることぐらいなものでしょう。

 

一方で、やはり年齢が年齢なので老害的というか自分の主張と相容れない部分もけっこうあった。特に、紙媒体に拘っているところと、わからない部分があっても最後まで読もうとするところが気になった。

僕は、紙媒体を読む行為と、画面を読む行為は少し違う気がしています。この感覚自体が、古いのかもしれませんが……。  新聞を読むのが苦手な人は、本を読むのも苦手なのではないでしょうか。オンラインニュースが新聞に取って代わられるようになると、必然的に本を読む人も減るような気がします。本好きな僕にとっては、憂うべき事態です。

わからない部分があっても気にせずに、分厚い本を一字一句読み進めていく。 「これ1冊を全部読み終えたら、いくらかはわかるようになるはずだ」と信じて、それはもう、ひたすら丁寧に読み込みます。すると、4~5冊を読み終える頃には、その分野の輪郭がつかめるようになります。

 

とはいえ、著者の本に対する愛が詰まった本であり、私が特に見習おうと思ったのが、著者の読書の作法(本との向き合い方)である。

読書は著者との一対一の対話なので、誠実に礼節を持って向き合う必要があるのだと。それはネクタイを締め、正座して本を読むぐらいの気持ちで臨むべきで、著者は汚さないようにカバーをかけ、手を洗い、必ず椅子に座って読んでいたのだという。私もこれくらい本を大切にし、著者に敬意を持って本と向き合いたいという気持ちになった。

 

おしまい