一匹狼の回顧録

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【書評】『展職のすすめ』石合信正

久々の書評として、最近読んだ転職・キャリア本を取り上げてみる。

 

展職のすすめ

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展職のすすめ 人生のバリューを上げるキャリアアップ転職の秘訣

本書は「転職を考えるすべてのビジネスパーソン必読の書」という帯のメッセージのとおり、国内外の大手企業など6度の転職を経験してきた著者が、キャリアアップを目指す読者に対して、転職を成功させる秘訣を30の項目にまとめて紹介してくれる。

表面的な転職マニュアル・転職攻略ガイド的な本とは一線を画しており、自身のキャリアをどのように考えバリューアップをしていくかという本質的な内容が多く、今転職を考えている人はもちろん、そうでない人や学生にもオススメできる一冊だ。

 

 <目次>
1 職は転がるな!展望をもて!転職すべきかを見極めるには将来設計が不可欠(職を「転がる」のではなく「展職」を目指す;カラフルでもモノトーンでも、自分に合った「会社人生」を ほか)
2 自己分析できない人は必ず失敗する 己の強さと弱さを知ることこそ、展職成功のカギ(転職は徹底的な自己分析から始まると心得よう;「無職」での転職はNG「現職」の強みを活かし、退職翌日入社が理想 ほか)
3 企業分析、履歴書作成、面接準備…内定獲得率を上げる己の売り込み方(転職はマーケティングであり、セールスである;仕事のやりがいは「その会社だからできること」に着目すると見つけやすい ほか)
4 理想の将来像を実現するために―入社前に押さえておくべき仕事の心得(辞める前のゴールデンルール 立つ鳥、跡を濁さず;転職先では「生涯一新入社員」と心得る ほか)

 

著者の石合信正氏は半導体メーカーのエイブリック株式会社の代表取締役社長兼CEO。

1953年生まれなので、今年で御年71になるが、この世代で6回の転職をしているのはかなりレアで、スマホもインターネットもなく、転職が一般的でない時代にキャリアアップを成功させた氏の言葉にはずっしりとした重みがある。

 

内容としては、1章と2章がキャリア・転職についての思考法(本書の真髄)、3章が履歴書の書き方・企業分析・面接準備などの具体的方法(本章だけやや転職マニュアル的)、4章が内定後~入社前の心得について記載されている。

これらの内容がわかりやすく30個の項目にまとめられており、ボリュームも170ページほどなので半日もあれば余裕で読了することができるだろう。なお、ホリエモンの『多動力』にテイストが似ているなと思ったら、同じ幻冬舎による出版であった。同社の自己啓発本は読みやすいものが多い。

 

【ポイント】

一つのキャリアの構築に最低3年は必要。

これは非常に同意できる内容。「嫌なら我慢せずやめればいい」という言説がもてはやされている昨今だが、少なくとも待遇を上げる転職をしたいのであれば、短期間で転職を繰り返すことはマイナスにしか作用しないと思われる。逆の立場(採用する側)に立って考えてみればわかることだと思う。

 

業種・職種・生活環境を同時に変えたら失敗する確率が高い。

比較的転職本でよく言われる内容だがこれも同意。「軸ずらし転職」などと一般的に言われているが、基本的に業種か職種を現職と合わせて転職しないと上手くいかないという内容。私は「法人営業」という職種軸で一貫して活動していた。生活環境の話が出てきているのは著者の海外勤務経験から言及されているものであり、日本国内の移住についてはあまり神経質ならなくてよいのだとか(私は田舎生活が嫌なのでそうは思わないが)。

 

転職先では「生涯一新入社員」と心得る

これは本当に大事な価値観だと思う。どれだけ歳下でも自分より入社年次が上であれば「先輩」であり、その会社のことについては教えを請うことになるわけなのだから、そうした謙虚な気持ちで周囲と接することは大切である。

前職で一定の職位があり転職してきた社員で傲慢に振る舞っている人間がいるが、知らず知らずのうちに周囲のメンバーに距離を置かれているケースもあり、そういう人は困った時に誰も助けてくれなくなるんだよな。

 

石合さんの座右の銘は「謙虚・温柔・感謝」とのことで、最後に紹介した「生涯一新入社員」という信条からもその一端が垣間見える。

華やかな経歴にもかかわらず、上から目線ではない著者の謙虚なメッセージで、読了後に心が穏やかになれる転職本であった。

個人的に久々に★5つの評価ができる素晴らしい本だったと思う。既にそうだが、これからもどんどん転職が当たり前の世の中になっていくはずなので、全てのビジネスパーソンと今後社会に出ていく学生に読んでほしい一冊である。

 

おしまい