
「最近、日本の治安が悪くなっている」と感じる人は少なくないようだ。
ニュースを見れば、凶悪事件や異常な犯罪といった雰囲気の報道が次々とされている。しかし、実際のデータを見ると、日本の刑法犯罪はこの20年間で劇的に減少している。
以下のNHKのニュースを見るとそれが数字で明確にわかる(なんか、この記事も治安悪化ばかりにフォーカスされてるけど)。
なぜ、犯罪がここまで減少しているにもかかわらず、多くの人が「治安が悪化している」と感じるのか?
それは、私たちが情報を受け取る過程で、心理的なバイアスやメディアの影響を強く受けるからだ。ハンス・ロスリング氏の『ファクトフルネス』でも述べられているように、世界を正しく理解するためには、データに基づいた視点が不可欠である。
かつて日本の刑法犯罪は年間285万件を超えていた
2002年、日本の刑法犯罪は年間285万4000件を記録し、戦後最多となった。これは日本の歴史上でも突出して高い数字であり、当時の治安状況がいかに悪かったかを物語っている。
当時、私は高校生だったが、繁華街の雰囲気は今とはまったく違っていた。特に、渋谷センター街や新宿歌舞伎町の治安は非常に悪く、夜に歩くのはそれなりの覚悟が必要だった(私がチー牛だったからか?笑)。
たとえば、2002年当時の渋谷センター街では、道端でドラッグの売人が堂々と声をかけてきた。高校の制服を着ていようと、売人に声をかけられることもあった。
新宿歌舞伎町も、今とは比べものにならないほど危険な場所だった。飲食店のキャッチは半グレや暴力団が仕切っており、少し路地裏に入ると明らかに危険な雰囲気が漂っていた。暴力団同士の抗争やトラブルも頻発し、一般人が巻き込まれるケースも少なくなかったと記憶している。
当時の若者のファッションは、B系やガングロギャルが流行し、不良文化と結びついていた。繁華街にはそうした若者がたむろし、些細なことで喧嘩が勃発することも珍しくなかった。ゲーセンとかまさに不良の巣だったしね。最近は不良・ヤンキーみたいなのは田舎に行かないと見ないのよね。
そこから19年連続の減少──2021年には56万件に
しかし、その後、日本の刑法犯罪件数は驚くほどのペースで減少した。
2002年の285万4000件をピークに、刑法犯罪の件数は19年連続で減少。2021年には56万8000件となり、戦後最少を記録した。これはなんとピーク時の5分の1以下の水準である(本気でこの数字を見て驚いたのは私だけだろうか)。
ここ数年は若干増加傾向にあるものの、それでも2002年と比べれば、圧倒的に低い水準にとどまっている。
「最近、治安が悪化している」という印象を持つ人は多いが、データを冷静に見れば、日本の治安はむしろ改善していることが明らかである。
なぜ「治安が悪化している」と感じるのか
日本の治安が悪化していると感じる理由として、考えられるものとして主に3つの要因を挙げてみる。
①メディアが「目立つ事件」を大きく報じる
テレビやネットニュースでは、凶悪犯罪や異常な事件が繰り返し報じられる。特に近年はSNSの影響で、事件の詳細が瞬時に拡散され、センセーショナルな報道が増えている。
その結果、犯罪の件数が増えているように錯覚しやすくなる。しかし、実際には事件の発生件数自体は減っており、ニュース媒体や報道の量が増えているだけという可能性がある。
②人間の「ネガティブ・バイアス」
ハンス・ロスリング氏の『ファクトフルネス』でも述べられているように、人間は悪いニュースを記憶しやすい傾向がある。そのため、凶悪事件の報道が増えると、「日本は危なくなった」と錯覚してしまう。
③高齢化により「危険を感じやすい」人が増えた
日本の高齢化も、治安が悪化しているように感じる要因の一つである。年齢を重ねると、少しの出来事でも「危険だ」と感じやすくなるため、高齢者の割合が増えることで「治安が悪くなった」と錯覚する人が増えた。
データを見て、冷静に世界を判断する習慣を
ニュースや新聞を読むときも、「事実」とテレビ局や新聞社の「主観」をしっかり分け、「データにもとづいて世界を読む」習慣を身につけるべきである。これはビジネスも同じで、「数字」や「ファクト」をベースにした発信や資料にしないと説得力が出てこない。
事実に基づいて世界を見つめ、正しい判断をする習慣を身につけよう。
おしまい
