
ロジカルシンキング(論理的思考力)は、ビジネスのあらゆる場面で求められるスキルである。
多くの人は「論理的に考えるのは難しい」「特別なトレーニングが必要」と考えがちだ。
確かに、ロジカルシンキングを体系的に学ぶことは有効だが、日常業務の中でも十分に鍛えられると最近感じている。
その最適な場の一つが、多くの人が日々会社でやっているであろう「報連相(報告・連絡・相談)」である。
「論理的に考える力」は、情報を整理し、結論を明確にし、相手に分かりやすく伝えることが重要だ。
これらのポイントを意識して報連相を行うことで、日常業務の中で自然とロジカルシンキングが鍛えられるのだ。
さらに、忙しい日々の中でも「考える時間」を意識的に確保することが、論理的思考を高める上で重要となる。
本記事では、報連相を通じてロジカルシンキングを鍛える具体的な方法について解説していこう。
報告:「ピラミッドストラクチャー」で整理して説明する
報告は、上司や関係者に業務の進捗や結果を伝える行為である。特に上司は常に多くの情報を処理しているため、端的に要点を伝えることが求められる。
「情報を階層化し、相手が理解しやすい順番で伝えることが、ロジカルシンキングの基本であり、そのため、報告では「ピラミッドストラクチャー」を活用するのが有効だ。
悪い例
「A社と打ち合わせをしました。先方からいくつか質問がありましたが、最終的には提案書を送ることになりました。」
この報告では、結論が曖昧で、情報の重要度が整理されていない。
「結論→理由→根拠」の順で整理すると、次のように改善できる。
良い例
「A社との打ち合わせの結果、来週までに提案書を送ることになりました(結論)。なぜなら、A社側が比較検討のための時間を確保したいと考えているからです(理由)。具体的に、担当者から『少なくとも全社会議に諮るために、1週間は検討期間が必要』との発言がありました(根拠)。」
短時間で的確に情報を伝えるためには、事前に整理する時間が必要である。
業務の合間に、報告の内容を頭の中で整理する癖をつけることで、自然と論理的思考力が高まる。
連絡:「事実」と「解釈」を分けて伝える
連絡は、情報共有を目的としたコミュニケーションだ。
しかし、ここでありがちなのが、主観的な意見が混じってしまうことだ。
例えば、次のような連絡を受けたとき、どう感じるだろうか。
悪い例
「取引先の担当者が不満そうな顔をしていました。おそらく提案に納得していないのだと思います。」
この連絡では、「不満そうな顔」と「納得していない」が混在している。しかし、「不満そうな顔」というのは主観的な解釈であり、事実とは限らない。ロジカルシンキングの基本は、事実と解釈を分けて考えることだ。
良い例
「取引先の担当者は、提案の説明中に腕を組み、表情を変えずに聞いていました(事実)。また、説明後に『もう少し検討したい』と発言しました(事実)。このため、提案の内容に対して慎重な姿勢を示している可能性があると考えます(解釈)。」
このように、事実と解釈を分けて連絡することで、情報の正確性が高まり、受け手が適切な判断を下せるようになる。日々の連絡の中で、このような整理を意識することで、論理的な思考が鍛えられるのである。
連絡をする際は、すぐに伝えず、一度「事実」と「解釈」を分けて整理する時間を確保することが重要だ。
相談:「課題→選択肢→提案」の型で構成する
相談は、相手に意見を求める場面である。
しかし、漠然とした相談は、相手の負担を増やし、適切なアドバイスを引き出しにくくする。例えば、次のような相談は最悪である。
悪い例
「今のプロジェクトですが、どう進めたらいいでしょうか?」
これでは、相談を受けた側も「何について考えればいいのか?」と困ってしまう。
そこで、ロジカルシンキングを活かし、「課題→選択肢→提案」の型で整理すると、相談の質が格段に上がる。
良い例
「現在のプロジェクトでは、進行が計画より遅れており、納期に間に合うかが課題です(課題)。原因は、追加の機能開発による作業増加と、リソース不足にあります。現状、①リソースを追加する、②機能を一部削減する、の2つの選択肢が考えられます(選択肢)。私は、②の案が現実的だと考えていますが、どの点を優先すべきか、ご意見をいただけますか?(提案)」
このように、論理的に整理された相談をすることで、相手は状況を素早く理解し、的確なフィードバックを返しやすくなる。結果として、相談する側の思考力も鍛えられるのだ。
忙しくても「考える時間」を意識的に持つ
現代のビジネスパーソンは、常に時間に追われている。
しかし、ロジカルシンキングを鍛えるためには、意識的に「考える時間」を確保することが不可欠である。
考える時間を確保するための工夫
• 報告・連絡・相談の前に、1分だけ整理する時間を取る
• 通勤時間や移動中に、今日の報連相を振り返る
• 日報やメモを活用し、論理的に整理する癖をつける
戦略コンサルティングファームで勤務したりMBAのプログラムを学ばなくとも、今日述べたような習慣を身につけることで、日々の業務の中でロジカルシンキングが鍛えられるのだ。
おしまい