
日本のサラリーマンは、世界的に見ても「戦闘力」が低い。
以前も当ブログで触れてきたが、これは個々の能力の問題ではなく、むしろ日本独自の雇用システムに根本的な原因がある。終身雇用、年功序列、企業別労働組合――これらの「守られた環境」が、サラリーマンをぬるま湯に浸からせ、真のビジネス戦闘力を鍛える機会を奪っているのだ。
私はかつて、寝る間を惜しんで勉強し、毎晩終電まで働いてきた経験がある。その過程で、どんな状況でも「やるしかない」と覚悟を決めて目標をやり抜く力が培われた。この覚悟こそが、真にビジネスの世界で生き抜くために必要なものだと思う。しかし、日本企業の雇用システムは、その力を削ぎ落としてしまっている。
本記事では、日本の雇用慣行がいかにサラリーマンの戦闘力を奪っているのかを論じ、加えて私自身の経験や、イーロン・マスクの働き方との比較なども交えながら、日本のビジネスパーソンが本当に強くなるためには何が必要なのかを考えていきたい。
終身雇用の弊害:リスクを取らないサラリーマン
終身雇用制度は、かつての日本経済を支えた成功モデルだった。高度経済成長期には、長期雇用を前提に従業員を育成し、会社と社員が運命共同体のような関係を築いていた。しかし、現代においてこの制度は「個人の成長」を著しく妨げる足かせになっている。
終身雇用の最大の問題は、雇用が保障されることで「リスクを取る必要がなくなる」点にある。仮に仕事ができなくても、成果を上げなくても、よほどのことがない限りクビになることはない。結果として、サラリーマンは「どうやって生き残るか」ではなく、「どうやって波風を立てずに過ごすか」に意識が向かいがちだ。
私が新入社員だった15年前、終電まで働くことが当たり前の環境にいた。当時の職場は決してホワイトではなかったが、その分、ビジネスの厳しさを徹底的に叩き込まれた。終電まで仕事をして翌朝も普通に出社する。この生活を続ける中で、身体は確かにキツかったが、それ以上に「何としてでもやり切る」という根性が身についた。
これは老害と言われるのだろうが、最近の若手社員を見ると、定時に帰り、リスクを避け、与えられた仕事をこなすことに終始している。もちろん労働環境が改善されたことは良いことだが、果たして彼らは、いざというときに踏ん張れるのだろうか、と思ってしまう。
年功序列の弊害:努力しなくても給料が上がる仕組み
最近改善されつつはあるものの、日本の企業文化に根付いた年功序列制度もまた、サラリーマンの戦闘力を奪う大きな要因である。年齢とともに自動的に給料が上がる仕組みでは、個人の努力や成果が正当に評価されにくい。
たとえば、私が大学受験をしていた頃は、起きている時間のすべてを勉強に充てていた。周囲のライバルたちも同じように必死だった。受験という競争があるからこそ、人は本気になれる。しかし、年功序列の環境では、そのような競争意識が生まれにくい。「どうせ時間が経てば給料は上がる」と思えば、誰が必死になって働くだろうか。
イーロン・マスクは、週に80時間から100時間働くことを推奨している。彼自身、睡眠時間を削り、昼夜を問わず働くことで次々と革新的な事業を生み出してきた。彼のような働き方を全員に強要するつもりはないが、少なくとも彼のマインドセットは見習うべきだ。成果を出すためには、努力を惜しまないことが不可欠であり、そこに甘えが生じるような環境では、真の成長は望めない。
企業別労働組合の弊害:会社依存体質の温床
日本の労働組合は、基本的に企業ごとに組織されている。この仕組みがもたらすのは、従業員の「会社依存体質」だ。
欧米の労働組合は、業界全体で横断的に組織されることが多い。日本製鉄のUSスチール買収計画のニュースでよくUSW(全米鉄鋼労働組合)が出てくることでもよくわかる。一方、日本では、各企業ごとに労働組合が作られるため、組合の目的が「会社との交渉」ではなく「会社の存続を守ること」にすり替わる傾向がある。結果として、社員は会社に守られることが前提となり、独立心が育たない。
私は、自身の経験からも「いざというときに頼れるのは自分自身だけ」という考えを持っている。新入社員時代、会社が守ってくれるという意識は一切なかった。むしろ、「自分が成果を出さなければ、誰も助けてくれない」という危機感の中で働いていた。だからこそ、スキルを磨くことに必死だったし、結果として、それが自分の武器になった。
だが、現代のサラリーマンの多くは、このような危機感を持たないまま仕事をしている。会社が守ってくれるという甘えの中で、個人の戦闘力はどんどん低下していく。
現職でそれでも感じる「ぬるま湯感」
私は現在、前職のような年功序列の仕組みも企業内労働組合もない会社に勤めている。
実力主義の環境であることは間違いないのだが、それでもクビにならないという安心感がある。つまり、完全な成果主義とは言い難い。この環境に甘えている自分がいることに、最近は危機感を覚えている。
本来、ビジネスの世界は戦場であり、結果を出せなければ淘汰されるのが自然な流れのはずだ。しかし、日本の会社では「よほどのことがない限り解雇されない」という前提が根強く残っている。私自身、今の環境に甘えず、もっと頑張らなければならないと考えているし、日本のサラリーマン全体ももっと緊張感を持つべきだと思う。現状は、やはりぬるま湯なのである。
ビジネス戦闘力を上げるにはどうすべきか
では、日本のサラリーマンが真に戦闘力を高めるためにはどうすればいいのか。答えはシンプルだ。 「守られた環境から一歩踏み出し、自らを極限に追い込む経験をすること」 である。
私の経験から言えるのは、困難に直面したときこそ人は成長するということだ。大学受験時代も、新入社員時代も、極限の状況で踏ん張る力を養った。その結果、今では割とどんな環境に置かれても戦える自信がある。
日本の雇用システムが変わるには時間がかかる。しかし、個人レベルでは今すぐにでも行動を起こせる。ぬるま湯から抜け出し、厳しい環境に飛び込むことが、真の戦闘力を手に入れる唯一の方法だと思う。
おしまい