一匹狼の回顧録

30代の孤独な勤め人がストレスフリーな人生を考える

考える時間をノートで確保せよ――手を動かすことで仕事は驚くほど楽しくなる

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「考える」という行為は、どこか特別な響きを持つ。だが、現実には多くの人間が考えているようで、実のところ何も考えていないことも多い。

メールの返信、報告書の作成、打ち合わせ後の議事録まとめ……日々の業務は、まるで波のように次から次へと押し寄せてくる。気づけば、目の前の作業をこなすことで精いっぱいとなってしまい、自分の頭でじっくり考える時間などどこにもない。かつての自分も、まさにそんな状態だった。

 

また、ある時ふと気づいた。ロジカルシンキングフレームワークの知識をいくら頭に詰め込んでも、現実の仕事ではほとんど活かせていないことに。インプットとアウトプットの間に、途方もない距離がある。なぜだろうか。

その距離を埋めるために、何が必要なのだろうか。そんな問いを抱えながら辿り着いたのが、「ノートで思考を整理する」という、あまりにもシンプルで、しかしあまりにも効果的な方法である。

 

考える時間を、意識的に「取る」

まず、前提として必要なのは、以前もブログで取り上げたが、考える時間を「確保する」という意識である。思考は、片手間にできるほど甘くはない。ルーティンワークと考える時間は、はっきりと分けなければならない。メールの返信や事務処理など、目の前のタスクは、思考停止でも処理できる。一方で、問題を深く捉え、構造化し、解決策を探る「考える」作業は、雑音のない静かな空間と、まとまった時間が必要だ。

私は、スケジュールの中に「考える時間」をあえてブロックとして組み込むことにしている。朝一番の30分でもいい。夕方の静かな時間帯でも構わない。その時間は、PCもスマホも閉じて、ただノートとペンに集中する。これが想像以上に効果を発揮する。

 

手書きのノートは、思考の速度と柔軟性を取り戻してくれる

ノートに手書きで考えを整理するのは、古臭く感じるかもしれない。だが、これは単なるアナログ回帰ではない。むしろ、デジタルツールが当たり前になった今だからこそ、手書きの強さが際立つ。

手書きは、考えをそのまま紙に「吐き出す」行為である。書いては消し、また書いてはつなぎ直す。その柔軟さは、PowerPointのスライドでは得られないものだ。スライドはどうしても「整えたもの」を作る場になってしまい、思考の試行錯誤を許さない。フォントの大きさや図形の整列に気を取られているうちに、肝心の中身を考える手が止まってしまう。ノートなら、そんな煩わしさは一切ない。

 

あるブログで「手書きのノートは、思考のカオスを許してくれる」と書いてあった。実に言い得て妙だと思う。脳内の未整理な情報は、まず無造作に並べてみることで、次第に構造を持ちはじめる。その第一歩として、ノートほど優れたツールはないのだ。

 

フレームワークは引き出しの数を増やすためにある

私は長らく、ロジカルシンキングやビジネスフレームワークの学習を「何かの役に立てなければ意味がない」と考えていた。しかし、ノートで思考を整理するようになってから、その考えが誤りだったことに気づかされた。

フレームワークは、いざというときにゼロから考える手間を省いてくれる「引き出し」のようなものだなのだ。3C、SWOTバリューチェーン……一度覚えれば、ノートにすぐに描き出せる。これは大きな武器ととなり、時間節約のツールとなる。たとえば、ある課題について考えを巡らせているとき、「この状況は、競合・顧客・自社の3Cで整理できる」と気づけば、途端に視界がクリアになる。つまり、フレームワークは「考えないための道具」ではなく、「早く考え始めるための道具」だったのだ。

ノートで何度も繰り返し図を書いているうちに、自然とフレームワークの形が手に馴染んでくる。これはタイピングでは得られない感覚だ。手が覚えている、という感覚は、まさに「思考の身体化」である。

 

インターネット上でも再評価される手書きノートの威力

調べてみると、ノートによる思考整理の効果は、インターネット上でも多くの人に指摘されている。いくつか紹介しよう。

ひとつは、「アイデアの質が上がる」という指摘だ。手書きは脳の異なる領域を刺激し、深い思考や創造的な発想を促すという。確かに、キーボードでの入力は速いが、あまりにも「速すぎる」がゆえに、浅い考えで終わってしまうことがある。一方、手書きはどうしてもスピードが制限されるため、そのぶんじっくり考えながら書くことになる。これが思考の深さにつながるのだろう。

もうひとつは、「記憶への定着率が高い」という点だ。ペンを動かし、自分の手で図や文章を作り上げる過程は、ただ眺めたり聞いたりするだけの学習よりも記憶に残りやすい。だからこそ、学んだフレームワークを手で何度も描いてみることは、実戦で役に立つ引き出しを増やすことに直結する。

また、「集中力が高まる」という意見も多い。デジタルツールは便利だが、通知や他のアプリに気を取られることも多い。その点、紙のノートとペンしかない状況は、物理的に集中を強制してくれる。シンプルだが、実に効果的な方法である。

 

仕事は、考えることで楽しくなる

最後に、ノートによる思考整理を続けてきて実感するのは、「考えること自体が楽しい」ということだ。これが一番大きい。

単なる事務処理の作業は「やらされ感」がつきまとう。しかし、自分の頭で考え、自分の手で形にしていく過程は、自分が仕事の主体になった感覚を取り戻させてくれる。これこそが、仕事の醍醐味であり、面白さだと思う。

もちろん、ノートに書いたからといってすべての問題が解決するわけではない。だが、少なくとも思考のスタートラインに立つまでの時間は圧倒的に短縮され、道筋が見えやすくなる。そして、そのことがまた次の「考えたい」という意欲につながっていく。

 

まとめ

ノートを開き、ペンを持ち、考える時間を意識的に取る。これだけで、仕事は変わる。いや、仕事が「楽しくなる」と言ってもいい。もし、日々の業務に追われ、考える時間が取れないと悩んでいるなら、まずは静かな場所でノートを開いてみるといい。最初の一行を書き出すことが、すべての始まりである。

 

おしまい