一匹狼の回顧録

30代の孤独な勤め人がストレスフリーな人生を考える

ノートは“記録”ではなく“武器”である──「黄金の3分割」とiPhoneメモ帳のすすめ

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「ノートをとる」という行為に対して、世の中の大半の人間はどこか「受動的な姿勢」を前提にしているように思う。私もそうであった。

上司の指示をメモする、会議の内容を書き残す、講義の板書を写す。いずれも「外からやってきた情報を記録する」ための行為であり、自らの頭を動かすという要素が著しく欠けている。

しかし、ノートとは本来、もっと能動的で、もっと創造的な道具であるべきだ。かの大前研一氏もこう言っている──「私にとってノート術というのは他人の話を書き留めるためのものではない。あくまで自分の思考を整理するためのものである」と。

 

この言葉に深くうなずいたのは、ある一冊の本と出会ったからである。『頭がいい人はなぜ、方眼ノートを使うのか?』(高橋政史著)。いかにも“意識高い系”のタイトルに胡散臭さを感じながらも、読み進めるうちに、これはただのノウハウ本ではないと気づいた。思考法の本質に肉薄している。特に強く心に刺さったのが、本書で紹介されていた「黄金の3分割」というノート術である。

頭がいい人はなぜ、方眼ノートを使うのか?

 

「黄金の3分割」とは何か

このノート術は、ページを縦に3分割し、それぞれのスペースに「事実」「解釈」「行動」を書き分けるというシンプルなものだ。左には目の前の事実を、真ん中にはその事実から導き出せる解釈を、右にはそこから自分がとるべき具体的な行動を記す。これだけで、頭の中の混沌とした思考が驚くほどクリアになる。

例えば、仕事上の問題解決に応用してみよう。営業成績が落ちている、という事実を左に書く。次に「新規開拓が減っている」「既存顧客のリピート率が低下している」といった分析結果や仮説を真ん中に並べる。最後に、「月曜の朝にターゲットリストを更新する」「メールの件名をABテストする」といった行動を右に書く。

この一連の流れは、まさにロジカルシンキングそのものだ。因果関係を丁寧に辿りながら、「で、結局どうするのか?」という問いに常に向き合う。この構造的な思考習慣は、単なるメモでは決して得られないものだ。

 

ノートをスマホに保存するという発想

さらに、私がこの「黄金の3分割」ノートを日常で活用するにあたって、ひとつ工夫を加えている。それが、書き終えたノートをiPhoneスクリーンショットし、メモ帳アプリに日付別で保存していくというやり方である。

このやり方には3つのメリットがある。第一に、紙のノートが散逸しても記録は手元に残る。第二に、いつでもどこでも過去の思考を見返せる。第三に、議事録や報告書といった“公式文書”をわざわざ別で作らなくても、これをそのまま使える。

特にこの第三の利点は大きい。文字だけの議事録は読み返しても頭に残らないことが多いが、自分の手書きの思考プロセスがそのまま視覚的に保存されていることで、記憶の定着率がまるで違う。しかも、スクショの画像はファイルとしても軽く、検索性も高い。

 

「使うノート」にはこだわらなくていい

本書では、升目のある「方眼ノート」が推奨されている。確かに、3分割のガイドラインを引きやすいという点では理にかなっている。

しかし、私の職場では支給されるのは普通の横罫の大学ノートであり、個人的に買い替えるモチベーションも低かった。

そこで、環境に合わせて運用を工夫することにした。横罫ノートでも、線を縦に3つに引いてしまえば機能としては十分だと感じている。大事なのは「見た目」ではなく「思考の整理」であり、無償のノートならケチらずジャブジャブ練習に使えるのである。

 

ロジカル脳を鍛える最短の道

ここ数ヶ月、私はロジカルシンキングフレームワークの書籍を読み漁っている。しかし、最も力がついたと実感できたのは、こうしたノート術を日々の仕事の現場で繰り返し実践することだった。

思考とは筋肉と同じで、鍛えなければ衰えるし、鍛えれば必ず強くなる。いくら優れた理論を頭で理解していても、それを使わなければ意味がない。だからこそ、「黄金の3分割」というフォーマットに従って、目の前の出来事を毎日記録していくことが、結果的に最速でロジカル脳をつくる近道になると私は確信している。

 

まとめ──ノートは最強の“思考ツール”である

情報が洪水のように押し寄せるこの時代において、自分の頭で考え抜く力はもはやスキルではなく「生存戦略」である。そして、その力を育てるためには、適切な“道具”が必要になる。

「黄金の3分割」とiPhoneメモ帳。この2つの組み合わせは、思考の可視化と蓄積を同時に実現する最強のタッグである。記録を残すだけでなく、自分の思考の軌跡をトレースし、次の行動を導き出す。そんな「武器」としてのノート術を、ぜひ一度試してみてほしい。

 

おしまい