転職してから一年半が経過した。
最初の半年は目の前の業務に喰らいつくので精一杯で、毎日深夜まで残業し、自分の無能さと闘いながら地道に経験と成果を積み上げてきた。
一年が過ぎた頃にはようやく周囲からの評価も安定し、業務にも慣れ、組織の動き方や人間関係の流れも読めるようになってきた。
そして、いま。時間的・精神的にふと「余裕」が生まれている。
この瞬間こそが、「次」を考える絶好のタイミングである。
「今の会社にはさほど不満はない。でもこのままでいいのか?」
そう自問しながら最近は、求人サイトや企業の採用ページをチェックするのが日課になっている。
あくまで“観察”にすぎない。今すぐ転職するつもりはない。だが、いつでも動ける準備だけはしておく。この習慣が、己の人生を主体的に生きるための大事なポイントであると信じている。
なお、次の転職活動においては、転職エージェントを介さず、できる限り「直接応募」で勝負したいと考えている。
理由は単純である。企業側はエージェント経由で人材を採用すると、年収の3〜4割に相当する紹介フィーを支払わねばならない。その分、直接応募の候補者には、条件面で柔軟な対応をしてくれる可能性が高いからである。
1.会社に自分の人生を預けない
企業とは、常に“全体最適”で動いており、個人の都合や事情など、ほんの些細な要素でしかない。どれだけ真面目に働いても、外部環境の変化やトップの一存で、簡単に予期せぬ配置変更をさせられたり、事業を売却されることで職を失う可能性だってある。
つまり、「ここに居続ける前提」で人生設計をしてはいけないということだ。
ではどうするか。
会社が自分を簡単に切り捨てる可能性があるのなら、自分も会社を“選択肢のひとつ”“取引先のひとつ“として冷静に扱うべきである。
そのために必要なのが、「いつでも転職できる状態」を維持するという視点だ。
それは別に、常に転職活動をしろという意味ではない。
ただし、履歴書や職務経歴書を定期的にアップデートし、転職市場における自分の価値を確認すること。ロジカルシンキングなど他社へ持ち運びできるポータブルスキルを身につけていくこと。
この最低限の備えすら怠っている人が、いざというときに良い転職先を見つけられるわけがない。
2.市場価値という現実
「今の年収は○○万円、でも同業他社なら+50万円のオファーが出るかもしれない」
「逆に、自分の業務はあまり市場価値がないことが分かった」
こうした“現実”に直面することは、気持ちの良いことではない。
しかし、自分のキャリアを見直すうえで、この事実と向き合うことから逃げてはいけない。
特に日本のサラリーマンは、「会社内の評価」にばかり目が行きがちで、「市場での評価」に無頓着な人が多い。
会社がくれる給与や昇進だけを頼りにしていては、外の世界で通用しない“社内限定スペック人材”に成り下がる。
たとえ今すぐ転職しないとしても、外部の評価軸を知っておくことは、自分のキャリア戦略を立てる上で非常に重要である。
3.選択肢を持つことは、精神の安定につながる
「嫌なら辞めればいい」
この感覚を持っているだけで、ブラックな環境や理不尽な上司に屈する必要はなくなる。
理不尽な指示にも、何も言えず耐えている人は多い。
なぜか?
「辞めたら次が見つからないかもしれない」という恐怖があるからだ。
逆に、「いつでも転職できる」という自信があれば、不条理を受け入れずに済む。
選択肢を持つ者は、環境に振り回されず、自分の軸で物事を判断できる。
これは、サラリーマンという立場において、非常に大きなアドバンテージである。
4.“転職しないため”に準備するという逆説
ここまで書いてきて勘違いしてほしくないのは、私は今の職場を辞めたいと思っているわけではないということだ。
むしろ、今の職場には感謝しているし、現時点では自分のキャリアにとって最適な場所であるとも思っている。
だが、だからこそ「いつでも転職できる状態」を維持するのである。
なぜなら、それが現在の職場に対して“自律した立場”を取るために必要だからだ。
「いつ辞めても構わない」と思っているからこそ、変に媚びたり、無理をしたりすることもない。
自分のペースで、冷静に仕事と向き合えるようになる。
結果的に、そうした姿勢が周囲からの信頼につながり、職場での評価が上がるということも往々にしてある。
5.転職市場は“準備している者”だけが勝つ
転職において最も重要なのは「タイミング」である。
だが、そのタイミングは自分の都合だけでは訪れない。
突然のヘッドハンティング、思わぬ企業の成長、知人からの紹介、副業からの独立…
こうした“偶然のチャンス”をものにできるのは、「準備していた者」だけだ。
逆に、何の準備もしていなければ、目の前の好機はただ通り過ぎていくだけである。
チャンスは平等にやってこない。
常に準備し、アンテナを張っている者だけが、それを「自分の人生の選択肢」に変えることができるのだ。
おわりに
転職して一年半。ようやく生活と仕事のバランスが整い、視野が少しだけ広がったように感じる。
この“余裕”が生まれたタイミングこそが、次のキャリアの選択肢を考える絶好の機会である。
今すぐに転職するつもりはない。だが、もし明日会社が傾いたとしても、心穏やかに「次」を選び取れる自分でいたい。
そういう生き方を選ぶのは、やはり「一匹狼」でありたいというポリシーの表れなのかもしれない。
おしまい