
新NISAが始まって1年半が経過した。従前からお伝えしているとおり、制度改正前から、私は手堅く投信をコツコツと積み立てていた。
だが、そろそろ“攻め”に転じるときではないか――そう思い始めたのは、米国株市場が調整を見せたためである。
まず、私の視界に再び浮かび上がったのが、テスラという異端企業だった。きっかけは中島聡氏のメルマガ。テクノロジーと未来予測を語るその筆致に導かれ、私はついに成長投資枠の活用を開始した。
新旧NISAの本質的な違い
改めて言っておくと、旧NISA(2023年まで)と新NISA(2024年〜)は、似て非なる制度である。旧NISAは、「非課税期間に制限がある」「売却しても枠が復活しない」「将来的に制度が終了する」という期限付きの“特典”にすぎなかった。
一方で新NISAは、制度の恒久化、非課税期間の無期限化、年間360万円の枠と1,800万円の生涯上限、売却後の枠復活といった、まさに「生涯の資産形成を支える設計」になっている。これはもはや一時の優遇措置ではなく、国家お墨付きの“資産形成のインフラ”である。これを使わない手はないのである。
制度の違いを理解した上で、自分のライフプランにどう組み込むか。それこそが、いま我々に求められている当たり前の投資リテラシーなのだ。
テスラという選択
さて、私はこのタイミングで、テスラ株を購入することにした。もちろん、これは万人に推奨できる話ではないし、当然未来が保証されているわけでもない。
テスラの株価は数か月前に比べれば戻りを見せているものの、やや調整局面にあり、決算でも売上・利益ともに減少傾向を見せている。CEOのイーロン・マスクの政治的発言がブランドに影響を与える懸念もある。
だが、ロボタクシー構想や、車という“移動するAIプラットフォーム”としてのビジョンには、今もなお確かな輝きがある。テスラは、単なるEVメーカーではない。AI、ロボティクス、エネルギー、モビリティという未来の産業基盤の上で、動いている企業なのだ。
投資とは、すでに完成されたものに賭ける行為ではない。成長の余地があると“信じるもの”に、お金というかたちで参加する行為である。
テスラは“マスク銘柄”である、という視点
私はひとつの仮説を持っている。たとえテスラの業績が一時的に低迷し株価が下がったとしても、イーロン・マスクが他のベンチャーで成功を収めれば、その成功が“逆流”する形でテスラの評価を押し上げる可能性があるのではないか、と。
彼の企業群は連動している。SpaceX、Neuralink、xAI、そしてX(旧Twitter)。どれもが、テスラと技術・資金・ブランドの面で繋がっている。マスクが何かを動かすたびに、市場はテスラの将来価値を再評価する。
市場は“人”に投資する──この原理がある限り、テスラという企業はイーロン・マスクの拡張であり続ける。ならば、テスラの株価もまた、彼の次の一手に引っ張られて戻ってくる可能性は十分ある。
それが私の仮説であり、リスクを承知の上で張る根拠である。
イーロン・マスクのファンだから買った
最後に、もう一つ率直な動機を明かしておこう。私は、イーロン・マスクの大ファンである。SpaceXのロケット打ち上げに胸を熱くし、彼のXでの独特な言動に時に驚かされ、時に感心してきた。何よりも彼の仕事への真摯な姿勢・ハードワークは見習うべきだ。正直に言えば、それがテスラ株を買う最大の理由だったのかもしれない。
この感情的な投資判断が、必ずしも悪いとは思っていない。むしろ、個人投資家の特権は“好き”という感情を正直に投資に反映できることにある。
機関投資家は合理とルールに縛られるが、個人投資家は思想・共感・信頼・応援といった人間的な要素を武器にできる。そしてそれは、思った以上に“強い”。なぜなら、人は数字よりも「信じたい何か」に長く耐えられるからだ。
株価が下がっても、「マスクなら、なんとかする」「好きで応援したんだから仕方ない」と思える。未来にかける想いが、握力となって背中を支えてくれるのだ。
余剰資金だけで、投資をする
ここで重要な前提を明確にしておく。
私は、投資は必ず余剰資金で行うというポリシーを貫いている。生活防衛資金として既に数千万円の現金を保有しており、それには手をつけない。これはリスク耐性うんぬん以前の、価値観の問題だと思っている。
どれだけ制度が優れていても、どれだけ市場が好調でも、投資とは「減る可能性のある行為」である。その現実から目を背けてはならない。だからこそ私は、自分のリスク許容度を明確に線引きし、守りを徹底したうえで、初めて“攻め”に出ることを決めた。
新NISA活用戦略──つみたてと成長のハイブリッド
私の新NISA活用戦略は、極めてシンプルである。
・つみたて投資枠(年間120万円)
インデックスファンドを自動積立。これは「投資の習慣化」として機能しており、精神的にも生活的にも“ノイズが少ない”。
・成長投資枠(年間240万円)
テスラを筆頭に、国内外の株へ分散(予定)。半導体・AI・宇宙関連や創薬などに注目。
なお、年間枠は年初に一括では使い切らず、「暴落時に買い増す余白」を意識して残している。相場は感情で動く。だからこそ、自分は冷静でいるための“戦略的な余白”を手放さない。
投資は、人生観の延長線上にある
新NISAを始めた人は多い。だが「制度を使ったかどうか」以上に大切なのは、「どう使ったか」「どこまでリスクヘッジするか」「どこまで腹を括ったか」だと思っている。
私は、テスラが将来どうなるかを断言することはできない。だが、自分が今このタイミングで“未来に対して責任を持って参加する”という判断を下したことに手応えがある。
このブログは、もちろん特定銘柄の推奨を意図するものではない。共有したいのは、「新NISAという制度を通じて、自分の人生観を映し出す鏡としての投資」の考え方だ。
現金をしっかりと確保し、余剰資金で未来に賭ける。この姿勢で今後も投資を続けていきたい。
おしまい