
先日、日経MJに掲載された以下の記事を読んだ。
有料会員限定記事ではあるが、ざっくり言うと、新入社員の半数以上が年功序列を望み、成長よりも安定を重視する傾向が強まっているという調査結果について書かれている。
若手のキャリア観は「挑戦」から「安定」へと明らかにシフトしている。これをどう受け止めるべきかを考えたい。
安定志向に振れる若手
調査が示す通り、若手は「自己実現」よりも「生活の安定」を優先している。
アラフォー世代の私としては信じられないのだが、年功序列や終身雇用を支持し、失敗を避けたい心理が目立つようだ。
VUCAの時代に先行きが読めないこと、AIによる仕事の変化への不安、そして「働き方改革」による職場のホワイト化がその背景にある。最後のは、ラクにそれなりの給料がもらえるなら、そこに安住したいということだろう。
世界との競争で生じる懸念
だが、この傾向はグローバル競争の中では危うい。世界の人材は成果主義を前提に血眼でスキルを磨いている。真っ先に思い浮かんだのだが、取引先や競合相手の中国企業である。
特に中国のIT業界では「996」という働き方が広がった。朝9時から夜9時まで週6日働くという過酷なスタイルである。批判も多いが、阿里巴巴(アリババ)や字節跳動(バイトダンス)といった企業が急成長できた背景には、この猛烈な労働文化があるに違いない。
これからの未来を担うはずの日本の若手が「無難さ」に安住するだけであれば、さらに世界との差が開き、再びガラパゴス化する危険は大きい。働き方改革が「ぬるま湯化」に転じれば、衰退は加速するだろう。
国内競争で勝つチャンス
ここで浮かび上がるのは、我々アラフォー世代の逆説的な優位性である。
パワハラや長時間労働が当たり前だった環境を生き抜き、ガムシャラに働くことで培った「胆力」や「修羅場対応力」は、若手の多くが安定志向に流れる環境下ではチャンスである。
社内で困難なプロジェクトが立ち上がれば、リスクを恐れる若手は敬遠するだろう。その場で手を挙げ、修羅場をまとめ切るのは我々のような世代である。かつて理不尽に鍛えられた経験が、今度はプラスに働くのだ。
グローバル競争では日本全体が遅れをとるかもしれない。しかし国内の出世競争や企業内での役割争いにおいては、我々世代の強みが光る余地は十分にある。若手が「安定」に傾くほど、挑戦の場面ではアラフォーが前に出やすくなる
淡々と進むしかない
調査結果を見れば、若手の頼りない考え方にはがっかりさせられる。
成長よりも安定、挑戦よりも安全。そんな発想でどうやって世界と伍していくのか、と落胆する気持ちはある。だが同時に、彼らを責め立てても現実は変わらない。
結局のところ、自分にできるのは淡々と目の前の仕事を積み重ねることだ。修羅場をくぐり抜けた世代として、与えられた役割を一つひとつこなしていく。その姿勢こそが、若手への批判よりも雄弁に未来を語るのではないかと思うのである。
おしまい