東洋経済のランキングを読む
先日、東洋経済が「10年間で残業時間を大きく減らした会社ランキング」を公表していた。
1位は日本オラクル、2位は日鉄ソリューションズ、3位はエクセディ。いずれも勤怠管理の仕組みや業務効率化により、平均残業時間を大幅に削減したとされる。
一方で、全体平均の残業時間は2013年度18.6時間から2023年度16.8時間へと小幅な減少にとどまり、残業削減の定着は容易ではないことが示されている。
勤務時間を減らすことの近視眼性
私はこのランキングを見て、違和感を覚える。勤務時間を削ること自体が目的化していないか。
私の職場では、どこの部署も勤務時間が異常に長い。しかし、残業時間が長くてもメンタルダウン率がゼロの部署もあれば、休務者・退職者が続出している部署もある。同じ「長時間労働」でも結果が異なるのは、要因が時間ではなく人間関係やマネジメントにあるからだろう。これは自分自身も身をもって感じている。
つまり、人を壊すのは労働時間ではなく、職場環境である。だから勤務時間規制だけを強めても、本質を外した対症療法にすぎない。
成長機会としての長時間労働
同じ期間働くなら、一日あたりの勤務時間が長い方が確実に成長する。若手時代を「修業期間」として猛烈に働き、実力を蓄えた人材が日本経済を支えてきた事実を忘れてはならない。
しかし、今の労基法や働き方改革は「長く働きたい人」の成長機会まで奪っていると思う。若者の中には、意図的に長時間働きたい人もいる。そうした多様なニーズを一律規制で押さえ込むのは、国益にかなうのだろうか。
成果と時間を切り分ける
「残業=悪」と単純化する風潮も危うい。短時間労働でも成果を出せる人もいれば、長時間働くことで力を伸ばす人もいる。重要なのは、時間ではなく成果と成長である。
実際、ランキング上位企業の施策は「勤怠システムによる管理」や「朝型勤務の導入」といった、制度設計の側面が目立つ。数字上の残業削減は実現できても、その裏で「持ち帰り残業」や「仕事の質の低下」が生じていないかは慎重に検証すべきである。
本当に改革すべきは何か
残業削減の取り組み自体を否定するつもりはない。しかし、真に改革すべきは「職場文化」や「マネジメントの質」である。人を潰すのは時間ではなく人間関係。労務管理の帳尻を合わせても、そこで働く人々の納得感や成長がなければ意味はない。
日本社会が目指すべきは、「時間を減らす」ことではなく、「時間と成果、そして人間関係の質を最適化する」ことだ。残業削減ランキングをただ礼賛するのではなく、その裏に潜む課題を直視すべきである。珍しく、まじめな文章を書いてしまった。
おしまい