成功本まとめシリーズ。
著者
INSEADブルー・オーシャン戦略研究所(IBOSI)の共同ディレクターであり、同校ボストン・コンサルティング・グループ・ブルース・D・ヘンダーソン講座教授(戦略論および国際経営)を兼任している。フランスに本拠を置くINSEADは世界第2の規模を誇るビジネススクールであり、著者は欧米、アジア太平洋地域の数々の多国籍企業において取締役や顧問を歴任した実績を持つ。
共著者のレネ・モボルニュ(RENÉE MAUBORGNE)も同じくINSEADの特別フェロー兼教授であり、両名は長年にわたってブルー・オーシャン戦略の研究に取り組んできた第一人者である。
要約
『ブルー・オーシャン戦略』の核心は、「競争のない市場空間を創造し、そこに新たな需要を生み出す」という思想にある。これは、既存の市場で血みどろの競争を繰り広げる「レッド・オーシャン」に対し、全く新しい価値を創造する「ブルー・オーシャン」という対比で説明される。「ブルー・オーシャン」のいう言葉自体、一般的にマーケティングや営業などのビジネスの場に既に定着しており、日常的に使っている人も多いのではないだろうか。
ブルー・オーシャンでは競争相手がいないため、企業は独自のルールでゲームを展開できる。本書は、このブルー・オーシャンを意図的に創造し、持続的な高成長と高収益を実現するための体系的なアプローチを提供する。
ポイント
・競争を前提にしない発想の転換
最大のポイントは、競争を避けるのではなく、競争の枠そのものを超えてしまうという思考である。従来の戦略論では「いかに競争に勝つか」が中心課題であった。しかし著者は、「競争から抜け出すこと」こそが企業成長の本質だと喝破する。この逆転の発想が、本書を世界的ベストセラーに押し上げた要因となっている。
・差別化と低コストの両立
従来の経営理論では「差別化かコストリーダーシップか」という二者択一が常識であった。ところが本書では、両者を同時に追求できるとする。その鍵が「バリュー・イノベーション」である。顧客にとって不要な要素を削ぎ落とし、価値の本質に資源を集中させることで、コストを削減しながら差別化を実現する。これは単なる理論上の奇策ではなく、数々の成功事例で裏付けられている。
・ツールとしての実用性
本書で紹介される「戦略キャンバス」や「四つのアクションフレームワーク」は、抽象的な理論を具体化するための優れたツールである。戦略キャンバスを描けば、自社と競合の提供価値の違いが一目で分かる。また、四つのアクションに従って思考すれば、どの要素を削ぎ落とし、どの要素を強化すべきかが明確になる。実務家にとっては、戦略立案の際の実用的なチェックリストとして機能するだろう。
・時間と持続性の視点
ブルー・オーシャンを創造したとしても、いずれは模倣者が現れ、市場はレッド・オーシャン化する。著者もその点を認めており、重要なのは「持続的にブルー・オーシャンを探し続ける仕組み」を企業内部に組み込むことだと述べる。つまり一度の成功ではなく、繰り返し市場創造を行う能力こそが競争優位の源泉になる。
誰に読んでほしいか
本書は、特定の職種や役職に限定されることなく、幅広い層に参考になる一冊だ。特に、以下のような人々には、ぜひ手に取ってほしい。
・経営者・事業責任者:既存事業の成長が鈍化し、新たな収益の柱を模索している経営者にとって、本書はブレークスルーのヒントとなる。未来の市場をどのように創造するか、その具体的な方法論を学ぶことができるだろう。
・企画・マーケティング担当者:新商品や新サービスを開発する際、競合他社の動向ばかりを気にしている担当者には、競争から一歩引いた視点を持つことの重要性を教えてくれる。顧客が真に求める「価値」とは何かを再定義するきっかけになるはずだ。
・起業家・フリーランス:ニッチな市場で勝負しようと考えている起業家や、自身のスキルをどのように差別化するか悩むフリーランスにとっても、本書の考え方は大いに役立つ。自分だけのブルー・オーシャンを見つけ、そこに独自の価値を提供することで、競争から自由なビジネスを構築する道が開ける。
・学生・研究者:ビジネスや経済学を学ぶ学生にとって、本書は現代経営学に触れるための格好のテキストだ。事例を通じて理論がどのように現実のビジネスに応用されるかを学ぶことは、将来のキャリア形成に役立つだろう。
まとめ
『ブルー・オーシャン戦略』は、従来の「競争に勝つ」発想から「競争を避けて独自の市場を創る」思考への転換を迫る革新的な書である。
戦略キャンバスや4つのアクションフレームワークが示す具体的手順は、抽象的な理論をビジネス現場に落とし込む上で極めて実践的だ。過去の延長にない市場創造こそが生き残りの鍵であり、既存産業の枠組みにとらわれることなく本質的な価値を探究する姿勢こそが、今後の企業活動に不可欠だと断じたい。
競争が激化する現代において、新たな成長機会を模索するすべてのビジネスパーソンにとって、読む価値のある一冊と言えるだろう。
ビジネス書は、全文を一度読むより、たった一つのポイントでも毎日読み返して自分の血肉にすることが大事。響いた点があればあなたの読書メモにも蓄積を。
おしまい
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