近日発売予定の三浦慶介氏『AI時代に仕事と呼べるもの』のAmazonページに書かれていた、「AI時代にも残る人間の仕事」の3分類がとても示唆的だった。
その3分類とはすなわち、
① 「経験知」を積み上げる仕事
② 「決断」して責任をもつ仕事
③ 「レビュー」で質を担保する仕事
とのことだ。
共通点は明確である。
いずれも人間の「判断」が介在する領域だということだ。
AIは、膨大な情報から最適に近い答え(=平均的な正解)を生成することは得意だ。
しかし、「何を目的とし、どこに線を引くか」という 価値判断は、状況・責任・覚悟等の要素が複雑に絡むため、AIだけでは完結しない。
① 経験知を積み上げる仕事
これは簡単に言うと、「現場を見て、何が大事かを判断する力」である。
例えば、同じようにクライアントへ提案に行くとしても、
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何に不安を感じているか
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決定権を持っているのは誰か
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相手が本当に求めているゴールは何か
こういうものは、会社ごとに全部違う。
最初は全くわからないが、何回も現場で話したり、失敗したりしているうちに、「あ、今日はこの話じゃないな」みたいな空気がわかるようになってくる。
AIは資料を作ったり、過去の事例を参照するのは得意だ。
でも、「この場で何を言うべきか」という温度までは読み取れない。
だから、現場で積む経験知は、まだ人間にしかできない仕事なのである。
② 決断し、責任を持つ仕事
不確実な状況でどこに賭けるかを決める。
たとえば、取引先との契約更新で条件がきつくなったとする。
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このまま続けるのか
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もう手を引くのか
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続けるなら、どこまで譲歩するのか
数字や資料だけ見れば答えが出そうに見えるが、実際はそうはいかない。
そこには、
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これまでの関係
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今後の展開
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自分が責任を負える範囲
といった人間的な要素が絡んでいる。
AIはメリット・デメリットを出すことはできるが、「その結果に自分が耐えられるか」まで判断できない。
決断とは、「自分がこれを引き受ける」と覚悟すること。
その腹づもりは、AIにはできない。
③ レビューする仕事
これは、「この成果物で本当にゴールを達成できるか?」をチェックする仕事である。
たとえば、若手が作った提案資料があるとする。内容も丁寧で、論理も通っている。
でも、「いや、これだと相手は動かないな」と感じることがある。
理由はシンプルで、相手が求めるポイントとズレているから。
このズレは、
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過去の提案
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成功と失敗の感覚
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交渉時の摩擦
などの積み重ねから、身体でわかるようになる。
こういう「通るか・通らないか」を見極める目は、
マニュアルにもAIの出力にも載らない。
だから、レビューは人間の仕事として残り続ける。
■ 共通する本質
3つとも、単なる「判断」ではなく、
状況を読み、意味づけし、自分の中に基準をつくること
に関係している。
AIは「答え」は返せるが、基準は人間がつくるものだ。
この視点は、これからの働き方を考える上で、とても重要だと感じた。
AIが仕事を置き換える、という話はもはや当たり前になっている。
しかし、多くの議論は「消える仕事」と「残る仕事」のリストアップで終わりがちだ。
本当に必要なのは、
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なぜその仕事が残るのか
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その本質は何か
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自分はどこに軸足を置いて成長すべきか
を言語化して理解することである。
三浦氏の提示するこの3分類は、その問いに対して、シンプルかつ本質的なフレームになっている。
発売されたら、手に取るつもりだ。
読む前から、ワクワク感を与えてくれた一冊である。
おしまい
