一匹狼の回顧録

30代の孤独な勤め人がストレスフリーな人生を考える

本屋と紀伊國屋新宿本店愛を語る

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近くに用事があったので、ふらっと紀伊國屋書店の新宿本店に立ち寄った。

わざわざ「寄り道」と言うほどでもないのだが、本屋という場所は、目的がなくとも足が向いてしまう。

自分にとって、あれはもはや神社みたいなものだ。とりあえず入って、空気を吸うだけで気持ちが落ち着く。

 

そして、本屋に入る前は、買う気がなくても必ず手を洗う。これはもう儀式みたいなもんだ。本棚に本に触れる際、自分の指先が不純であってはならない、という敬意である。

実際に本屋の店内を見てみると、誰も騒いでいないし、モラルの低い客なんてほとんどいない。

スマホで大きな声で話す奴もいなければ、本を乱雑に扱う奴もいない(まあ、ブックオフは除く。あそこは「古本市場」であって「書店」ではない、という線引きをさせてもらう)。

私にとって、本屋は神聖な場なのである。

 

さらに、紀伊國屋新宿本店には、何度来ても不思議な魅力がある。規模だけで言えば、ジュンク堂池袋本店のほうが大きい。

棚の数も、在庫の幅も、ジュンク堂の勝ちだと思う。それでも紀伊國屋に行きたいと思うのは、本の見せ方が上手いからだ。

 

紀伊國屋は、単に本を並べているのではない。

• 表紙を見せる陳列:平積みが本当に上手い。客の目に飛び込ませる情報量が巧みで、何が「今」アツいのかが一目瞭然だ。

• 特集棚のセンス:各ジャンルを横断するようなテーマ設定が秀逸で、「こんな切り口で本が選べるのか」と感心させられる。棚の脇にあるポップも凝っていて、つい立ち止まってしまう。

• 導線の美しさ:広大なフロアを、客が迷いつつも心地よく周遊できるように設計している。古くからのビルなので複雑な構造だが、それが逆に宝探しのような楽しさを生んでいる。

ジュンク堂が「図書館のように網羅的」であるのに対し、紀伊國屋「編集的」な書店だと言える。蔵書数で劣っても、客に新しい本との出会いを提供し、その興味を引き寄せる力が桁違いなのだ。

 

特に買うつもりはなかったのだが、結局一冊買ってしまった。

そういう風に買わせるのがうまい本屋ということだ。まあ、良い出会いだったから問題ない。

 

あの老舗ビル全体から漂う文化的でレトロモダンな空気も、本の持つ重厚感と相まって素晴らしい。

実はこの建物、2017年に「東京都選定歴史的建造物」に指定されている。つまり、ただの古いビルではなく、「街の記憶と文化を背負った建物」として評価されているわけだ。

だから紀伊國屋は、老朽化したからといって簡単に建て替えなかった。代わりに、耐震補強と内装のリニューアルの道を選んだ。外観の雰囲気はそのままに、中身だけアップデートするやり方だ。

本屋というのは、情報の倉庫であると同時に、街の空気を作る存在でもあると思う。あの佇まいが急にピカピカの新築ビルになったら、ただの大型書店になってしまう気がする。

 

レトロな外観と、時代を捉えた編集的な陳列が共存する紀伊國屋新宿本店。ここはまさに、過去と現在が交差する、読書家の聖地であり続けている。

そして、紀伊國屋がこれほどまでに「編集的」であるということは、棚の顔が常に変わっているということだ。書店が発信する「今読むべき本」「今流行っているテーマ」というトレンド情報を逃さないために、新しい特集やフェアが組まれるタイミングを狙って、せめて1〜2ヶ月に1回は必ず立ち寄りたいものである。

 

おしまい