学生時代、私は文系の科目、特に国語や社会においては「得意中の得意」と自負していた。しかし、同時に理数系の科目だけはいつまでも苦手なままであり、そのコンプレックスは社会人となった今も、深く尾を引いている。
得意分野で結果を出しても、理数系への苦手意識が「自分には致命的な穴がある」という欠落感となって、心の片隅に残り続けているのである。
敗因は「土台の脆さ」
敗因を振り返ると、その多くは「数学」そのものにあるのではなく、「算数」という土台の脆さにあったと確信している。
例えば、高校の微積分でつまずいたとき、本当に理解できていなかったのは、複雑な計算の裏にある分数や比、割合といった基礎的な概念だったのではないか。これらの基本が曖昧な状態で、次々と積み上がる数学の知識を追いかけても、それは砂上の楼閣に過ぎない。中学数学までは何とか丸暗記で乗り切ったが、それでは高校数学は太刀打ちできなかった。
したがって、再挑戦の道筋は極めて明確である。それは、小学校の算数からやり直し、ひとつでも「スラスラ解けない」と感じる部分があれば、そこで立ち止まって徹底的に学び直すという、遠回りに見える戦術だ。
激務でも挫折しない学び方:スキマ時間と「スモールステップ」
現在の私は激務に追われており、高校時代のように何時間も机に向かうことは不可能である。しかし、この学び直しには高校の定期テストのような「期限」がないという利点がある。自分のペースで、着実に進められるのだ。
この状況で最も効果的なのが、「スキマ時間の活用」と「インプット中心の学習」である。
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解説本を読み込む:分厚い問題集ではなく、『教えられるほどよくわかる』といった大人向けの解説本を、通勤中や休憩時間に開く。目的は、公式の「なぜそうなるのか」という原理原則を理解することに特化する。
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知識の「診断」とする:解説本を読む行為は、そのまま自分の知識の穴を探る「診断」となる。「この分野の解説は腑に落ちない」「ここが怪しい」と感じた箇所こそが、真正面から取り組むべき弱点である。
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アウトプットは最小限に:問題を解く(アウトプット)のは、原理を理解した後で、自宅での数分間に留める。完璧な理解を求めた原理のインプットこそが、忙しい時期の最優先事項だ。
「スラスラ解ける」まで立ち止まる勇気
学び直しの成否を分ける最大の鍵は、「スラスラ解けない」というシグナルを無視しないことである。
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少しでも手が止まる問題があれば、次の単元には絶対に進まない。
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その単元の解説に戻り、別の教材やインターネット解説、ChatGPTなども参照し、腹落ちするまで掘り下げる。
これは一見、時間のかかる非効率な方法に見えるかもしれない。しかし、基礎を曖昧にしたまま先へ進み、途中で立ち止まらざるを得なくなるより、遥かに効率的である。
文系の素養に加え、長年のコンプレックスの源であった数学の基礎を強固にすることで、より論理的で多角的な思考力を身につけられるはずだ。
コンプレックスを自信に変える一歩は、一冊の算数参考書から始まると考えている。
おしまい
