一匹狼の回顧録

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【成功へのメモ】『巨象も踊る』

成功本まとめシリーズ。

巨象も踊る

巨象も踊る

著者

ルイス・ガースナー

アメリカの経営者。ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。その後、アメリカン・エキスプレス、RJRナビスコなどで経営に携わった。1993年にはIBMの会長兼CEOに就任し、経営危機にあった同社の立て直しを進めた。IT業界の出身ではなく、顧客や事業の視点から組織を変革した経営者として知られている。

要約

本書は、経営危機に陥っていたIBMを著者がどのように立て直したのかを、自ら振り返った経営書である。

当時のIBMは、巨大企業ゆえの縦割り組織や意思決定の遅さ、過去の成功体験への依存など、多くの問題を抱えていた。著者は会社を分割するのではなく、ハードウェア、ソフトウェア、サービスを一体として提供できる強みを生かす道を選ぶ。そして、製品を売る会社から、顧客の課題を解決する会社へと方向転換した。

企業再生には、戦略だけでなく組織文化や社員の行動を変える必要があることを示した一冊である。

ポイント

① 分社化を退け、統合を選択
著者が就任した当時、会社は巨額の赤字を抱えており、前任のCEOが主導する形で、メインフレーム、ソフトウェア、サービス、半導体といった複数の独立会社(通称「ベイビー・ブルー」)に分割する計画がすでに進行していた。

当時の業界の潮流から見れば、この提案は決して不自然なものではなかった。分割すれば各事業がそれぞれの市場環境に最適化でき、身軽になれるという理屈である。

しかし著者は、顧客が本当に求めているのは、バラバラの製品ではなく「複雑なシステムを一括して面倒見てくれる存在」だと考えた。分割すればこの強みを自ら手放すことになる。そこで著者は統合を維持する決断を下し、これが後にサービス事業を軸とした新しいビジネスモデルを生み出す土台となった。

目先の効率化ではなく、顧客視点から会社の存在意義を再定義した点が、この判断の核心である。

② 売り切り型からサービス型への転換
かつての主力事業は、ハードウェアを製造し、顧客に販売して終わりというモデルだった。

しかし、著者が経営を担った時代、すでに技術のコモディティ化が進み、製品単体の差別化は難しくなっていた。著者はここで発想を転換し、顧客が本当に求めているのは「製品」ではなく「自社の業務課題を解決してくれるパートナー」であると気づく。

そこで、コンサルティング、システム構築、運用保守までを一括して提供するサービス事業を新たな収益の柱として育てていった。この転換は一朝一夕にできるものではなく、社内の営業体制や評価制度、人材育成の仕組みまで含めた大がかりな改革を伴った。結果として、この事業モデルは会社の収益構造そのものを塗り替える中核事業へと成長していく。

③ 組織文化こそが最大の経営課題という認識
著者は経営再建に着手した当初、多くの人が想像するような「新しい戦略の策定」よりも先に、組織文化の問題に直面した。意思決定に時間がかかり、社内政治が優先され、顧客よりも内部の論理を重視する風土が根強く残っていたのだ。

著者は「文化は戦略を実行するための単なる手段ではなく、文化そのものが経営の本質だ」という趣旨の考えを持つに至る。この認識のもと、経営会議の運営方法を見直し、意思決定のスピードを上げる仕組みを導入し、評価制度を成果重視のものへと変えていった。

抽象的なスローガンを掲げるのではなく、日々の業務プロセスの細部にまで手を入れることで、じわじわと組織の体質を変えていったプロセスが本書では詳細に描かれている。この地道な取り組みこそが、後の業績回復を支える基盤になったといえる。

誰に読んでほしいか

本書は、経営者だけでなく、大きな組織の中で「会社を変えるのは難しい」と感じている人に読んでほしい一冊である。企業変革という大きなテーマを扱っているが、会社員の日常にも当てはまる部分は多い。

  • 大企業で働いている人
    部署間の壁、社内調整の多さ、意思決定の遅さなどに悩んでいる人には、特に参考になる。
  • 管理職やリーダーを目指す人
    人を動かすには、号令をかけるだけでなく、評価や仕組みまで考える必要があることを学べる。
  • 営業や事業企画に携わる人
    自社の商品を売るのではなく、顧客の課題から考えるという基本を改めて確認できる。
  • 会社の変革に関わっている人
    組織改革がなぜ進まないのか、どこから手を付けるべきなのかを考えるヒントになる。

まとめ

『巨象も踊る』は、巨大企業IBMの再生を描いた本であるが、本質は単なる成功物語ではない。

会社が大きくなるほど、顧客より社内、自社全体より自分の部署を優先するようになりやすい。著者が行ったのは、派手な新規事業を始めることよりも、会社の視線をもう一度顧客に戻し、社員の行動や評価の仕組みを変えることであった。

優秀な人材や技術があっても、それぞれが別々の方向を向いていれば成果にはつながらない。逆に、巨大な組織でも方向性をそろえ、行動の仕組みを変えることができれば、再び成長することができる。

本書は、組織を変えるとは何かを具体的に考えさせてくれる一冊である。

 

ビジネス書は、全文を一度読むより、たった一つのポイントでも毎日読み返して自分の血肉にすることが大事。響いた点があればあなたの読書メモにも蓄積を。

 

おしまい