一匹狼の回顧録

30代の孤独な勤め人がストレスフリーな人生を考える

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このブログでは孤独な30代の僕が、異性に困らず、ストレスフリーな人生を生きるヒントを少しでも与えられればと思い開設しました。

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ChatGPTで模擬面接。24時間365日

転職活動をしていて、最近便利だと感じているのがChatGPTを使った模擬面接である。

3年前に転職活動をしていた時も、ChatGPTは世に出てきてこそいたが、ここまで便利ではなかった。

これまでも面接対策として、想定質問を考えたり、回答文を添削してもらったりすることはできた。

しかし、今はもう少し実践的な使い方ができる。

 

音声入力を使って、実際に声に出して面接の練習ができるのである。

たとえばChatGPTに面接官役をやってもらい、

「まずは通常の一次面接くらいの難易度で」
「今度は回答に対して徹底的に深掘りして」
「少し圧迫気味に」

といった具合に、面接の難易度まで変えられる。

質問に対して実際に声で回答し、その内容について、

  • 結論が先に来ているか?
  • 話が長すぎないか?
  • 具体例はどうか?

といったフィードバックをその場でもらえる。

 

さらに面白いのが、実際に録音した音声をアップロードして分析してもらえることである。

文章としての回答だけではなく、話すスピードや間の取り方、一文の長さ、聞き取りやすさなど、「話し方」そのものについても改善点を確認できる。

私は面接の回答を文章で作り込むと、どうしても情報を盛り込みすぎる癖がある。

ところが実際に声に出してみると、

「これは一文が長い」
「ここは説明しすぎている」
「結論だけ言って、聞かれたら補足した方がいい」

ということがよく分かる。

 

面接対策というと、以前なら転職エージェントや家族、友人などに面接官役をお願いする必要があった。

当然、相手の予定もあるし、何度も付き合ってもらうのは気を遣う。

その点、ChatGPTは相手が人間ではない。24時間365日、こちらが気になったときに何度でも付き合ってくれる。

「もう一回最初から」「今度はもっと深掘りして」「同じ質問を回答が固まるまで繰り返して」と頼んでも、嫌な顔一つしない。

面接の前日に10回練習してもいいし、回答がしっくりこなければ、その場で修正してすぐにもう一度試せる。

気が向けば、納得するまで徹底的に練習できる。

これは、人間相手の模擬面接にはないAIならではの強みだと思う。

便利な時代になったものである。

 

おしまい

 

 

【成功へのメモ】『ビジョナリー・カンパニー』

成功本まとめシリーズ。

ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則

ビジョナリー・カンパニー

著者

ジム・コリンズ

ジェリー・ポラス

本書は、経営学者・経営コンサルタントのジム・コリンズと、スタンフォード大学経営大学院教授だったジェリー・ポラスによる共著である。

著者らは、長期間にわたって高い評価を受けてきた企業を「ビジョナリー・カンパニー」と呼び、それらの企業がなぜ長く繁栄できたのかを研究した。単に成功企業を調べるのではなく、それぞれに比較対象となる企業を設定し、両者の違いを分析している。

約6年間にわたる研究成果をまとめ、1994年に米国で刊行されたのが本書である。

要約

本書は、「長期にわたって繁栄し続ける企業には、どのような特徴があるのか」を研究した経営書である。

著者らは、3M、P&G、ウォルト・ディズニー、ソニーなど18社を「ビジョナリー・カンパニー」として選び、比較対象となる企業と対比しながら、その特徴を分析した。

そこで見えてきたのは、優れた会社をつくるために、天才的な経営者や画期的な商品が必ずしも必要なわけではないということである。

重要なのは、経営者個人や特定の商品に依存するのではなく、基本理念を守りながら変化を続けられる「会社そのもの」をつくることである。

時を告げるのではなく、時計をつくる

多くの人は「優れた企業には、未来を予知して正しい指示を出すカリスマ経営者がいる」と考えがちだ。しかし、一人の天才が「今は何時だ」と時を告げるような組織は、その経営者がいなくなった瞬間に崩壊する。

本当に偉大な企業が作っているのは、経営者ではなく「時計」そのものである。時計とは、リーダーがだれに交代しても、時代が変わっても、勝手に動き続けて時間を刻み続ける「組織の仕組みや文化」を指す。一人のヒーローに依存するのではなく、素晴らしい組織という制度を設計することこそが、永遠に生き残る企業の条件である。

基本理念の重要性

ビジョナリー・カンパニーには、長い歴史の中でも簡単には変えない「基本理念」がある。

基本理念とは、「自分たちは何を大切にする会社なのか」「何のために存在しているのか」という企業の根本的な価値観である。

ここで重要なのは、基本理念そのものは何十年経っても一切変えない一方で、事業内容や具体的なやり方は時代に合わせて変え続ける点だ。変わらない軸(基本理念)があるからこそ、企業は恐れずに新しい変化(進歩)へ挑戦できる。軸がない企業は、流行に振り回されて迷走するか、変化を恐れて衰退するかのどちらかに陥る。

社運を賭けた大胆な目標

BHAGとは「Big Hairy Audacious Goal」の略で、日本語版では「社運を賭けた大胆な目標」と表現されている。

簡単に言えば、簡単には達成できないほど大きく、組織の人々を奮い立たせる目標である。

山登りで言えば、目の前の小さな丘を目指すのではなく「エベレストに登る」と宣言するようなものだ。目標が圧倒的に明確で挑戦的であるため、組織全体に強烈なエネルギーが生まれ、社員の情熱が一つにまとまる。達成には10年〜30年かかるが、この巨大な目標に挑み続けるプロセス自体が、企業を飛躍的に成長させる駆動源となる。

誰に読んでほしいか

本書は経営者向けの経営書に見えるが、会社員にも応用できる考え方が多い。特に、「自分が成果を出す」だけでなく、「自分がいなくても成果が出る仕組みをつくる」という視点は、管理職やリーダーを目指す人にも参考になる。

以下のような人におすすめしたい。

  • 経営者・管理職

    個人の能力に頼らず、長期的に成長できる組織をどうつくるかを考えるヒントになる。

  • チームリーダーやマネージャーを目指す人

    自分一人で仕事を抱えるのではなく、人材や仕組みを通じて成果を出すという視点を学べる。

  • 新規事業に携わる人

    目先の商品やサービスだけでなく、それらを継続的に生み出す組織や文化について考えるきっかけになる。

  • 自分のキャリアについて考えたい人

    「何を変えるか」と同時に「何を変えないか」を考えることで、自分なりの仕事の軸を整理できる。

まとめ

本書の最大のメッセージは、「一時的に成功する会社」と「長期間にわたって成長する会社」は違うということである。

優れた経営者がいる。大ヒット商品がある。素晴らしい戦略がある。それだけでは、長く繁栄する会社にはならない。

重要なのは、経営者が交代し、商品が変わり、時代が変化しても成長を続けられる「時計」をつくることである。

そして、その中心には、簡単には変えない基本理念があり、一方では現状に満足せず、大胆な目標に挑戦し続ける姿勢がある。

「何を成功させるか」ではなく、「成功を生み出し続ける仕組みをどうつくるか」。

会社や組織を見る視点を一段上げてくれる一冊である。

 

ビジネス書は、全文を一度読むより、たった一つのポイントでも毎日読み返して自分の血肉にすることが大事。響いた点があればあなたの読書メモにも蓄積を。

 

おしまい

 

 

営業にはいつでも戻れる、と思う

転職活動をしていて、最近ふと思うことがある。

営業には、たぶんいつでも戻れる。

私はこれまで長く法人営業を経験してきた。顧客と関係を作り、課題を聞き出し、社内を巻き込みながら提案をまとめ、契約まで持っていく。この仕事は好きだし、自分なりの型もできている。

 

なので、40代に差し掛かった今、営業以外の仕事に改めて挑戦しようと思っている。

候補として考えているのが、事業企画やコンサルティングである。今も、事業企画的な仕事を一部やっている。

求人を眺めたり面接対策をしたりしていると、実はこの2つはかなり似ていることに気づいた。

市場を分析し、課題を発見し、あるべき姿を考え、施策を企画する。そして、経営層や現場を巻き込みながら実行・実現する。

コンサルはそれを顧客企業の外側から行い、事業企画は自社の内側から行う。立っている場所が違うだけで、使う頭はかなり近い気がする。

 

そして、この「上流の仕事」を経験することは、自分の市場価値を広げることにもつながるのではないかと思っている。

事業企画やコンサルを経験すれば、営業に加えて、課題設定、戦略策定、企画、プロジェクトマネジメントといった武器を増やすことができる。

もちろん、上流工程に行けば自動的に年収が上がるわけではない。トップセールスや外資系営業には、コンサルタント以上に稼ぐ人もいくらでもいる。

 

それでも40代以降のキャリアを考えると、重要なのは「今いくら稼いでいるか」だけではない気がする。

市場価値とは、次に選べる仕事の数なのではないだろうか。

営業しか経験していない人より、営業もでき、事業企画もでき、プロジェクトも動かせる人の方が、将来選べるポジションは増える。

営業を捨てるつもりはない。むしろ営業という武器をすでに持っているからこそ、今のうちに別の武器を取りに行きたい。

40代は守りに入る年代とも言われるが、私は逆に、まだ身体がフルで動けるうちに自分の守備範囲を広げておきたいと思っている。

 

おしまい

 

 

転職活動をきっかけに、仕事の古典を読む

転職活動を始めてから、仕事に関する古典的名著を読んでいる。

営業ならオススメは『戦略販売』である(1989年発刊)。

戦略販売: 長期的信頼関係をつくるセールスの6大要素

この本は、私が営業として学び、意識してきたことがかなりまとまっている。

日本版は絶版なので、要約をビジネス書のまとめ本などで把握し、英語のKindle版をかいつまんで読んでいる。

 

転職活動では、プロジェクトマネジメントの経験もアピールしており、その分野なら『人月の神話』(初版1975年)『クリティカルチェーン』(初版2003年)といった本が古典である。この辺りの本からエッセンスを抽出し、自分の経験とつなげて語る練習をしている。

人月の神話 「ザ・ゴール」シリーズ クリティカルチェーン: なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?

経営や組織については『ビジョナリー・カンパニー2』がお気に入りだ(初版2002年)。

ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則

どれも新しい本ではないが、読んでみると仕事にそのまま使える考え方が多い。

 

例えば『戦略販売』では、意思決定に関わる人を整理し、それぞれが何を重視しているのかを考えるだけでなく、セールス・ファネル全体を見ながら案件を管理する発想も出てくる。

個別案件だけにのめり込まず、案件数や進捗、確度を見ながら、どこに営業リソースを使うべきかを考える。今でいうパイプライン管理にかなり近い。

プロジェクト管理の2冊なら、認識齟齬を早く潰し、遅延を早く表面化させ、全体を止めるボトルネックを重点的に管理する。

そして最近、特に自分と相性がいいと感じるのが『ビジョナリー・カンパニー2』である。

この本には「弾み車」という考え方が出てくる。重い車輪を少しずつ押し続けるように、正しいことをひたすら地道に積み重ねていく。最初はほとんど成果が見えなくても、あるところから勢いがつき、大きな成果につながる。というものだ。

 

私は昔から、こういう地味な努力が好きである。

一発で大きな成果を狙うより、本を読む、考える、仕事で実際試す、改善する。それをコツコツと繰り返して、気付いたら以前より遠くまで来ている、という方が性に合っている。

もちろん、努力なら何でもいいわけではない。何に集中するかを決め、その方向に努力を積み上げることが重要であるとも思う。

転職活動のために始めた勉強だが、転職できるかどうかとは関係なく、あらゆる仕事に応用できる基本的な概念が学べるのが、古典の良いところだと思う。

 

おしまい

 

 

社畜の放課後、転職活動をする

社畜の放課後の転職活動はかなりきつい。

仕事が終わってから、求人を探して、会社を調べて、職務経歴書を直して、必要なら志望動機まで考える。面接が近づけば、企業研究や想定問答の準備も必要になる。

冷静に考えると、実質「放課後にもう一つ仕事をしている」ようなものである。

 

だが、不思議なことに、求人を眺めながら職務経歴書を作っていると、なんとも充実した気分になる。

これは、毎日社畜をやっているだけでは、絶対に味わえない感覚である。

なぜこんな気分になるのか。

 

おそらく、自分の人生を自分で切り開いている感覚が強いからなのだと思う。

普段の仕事では、会社から与えられた目標や案件をこなして一日が終わることも多い。

しかし、転職活動では、考えるテーマがまるで違う。

  • 自分は何ができるのか
  • 次に何をやりたいのか
  • どんな会社なら面白そうか
  • 自分の市場価値はいくらなのか

全部、自分自身の話である。

求人票を眺めているだけでも、「おぉ、こんな仕事もあるのか」「この仕事なら今までの経験が使えそうだ」「こういうキャリアも面白そうだ」と、未来の選択肢が少しずつ増えていく。

だから疲れているのに、妙に楽しいのである。

 

特に、求人を見ながら職務経歴書を作るのは面白い。

過去の仕事を振り返り、「自分は何をやってきたのか」「何が強みなのか」を整理しながら、それを次の会社でどう使うのかを考える。

これは、過去を棚卸ししながら、未来を設計している時間である。

言い換えれば、自分のキャリアを編集している時間なのだと思う。

 

そして転職活動の面白いところは、まだ転職すらしていない段階で、この感覚を味わえることである。

内定が出たわけでもない。

年収が上がったわけでもない。

会社を辞めたわけでもない。

それでも、「自分には別の選択肢がある」と思えるだけで、日常の見え方がかなり変わる。

もしかすると転職活動とは、会社員が久しぶりに自分の人生の主導権を握る時間なのかもしれない。

結果として転職するかどうか以上に、選択肢を持っていること自体が、一つの精神的な報酬になっている。

 

放課後の転職活動は、きつい。

それでも今日も求人を眺めてしまう。

疲れているのに、悪くない気分なのである。

 

おしまい

 

 

【成功へのメモ】『エクセレント・カンパニー』

成功本まとめシリーズ。

エクセレント・カンパニー Eijipress business classics

エクセレント・カンパニー

著者

トム・ピーターズ

ロバート・ウォータマン

本書の著者は、世界的なコンサルティング会社であるマッキンゼーに所属し、企業の組織や経営について研究していた二人の経営コンサルタントである。

二人は、企業を戦略や組織図だけで捉えるのではなく、人材、経営スタイル、能力、共通の価値観なども含めて考える「7S」という組織分析の枠組みづくりにも関わった。この研究を発展させ、優れた企業に共通する特徴をまとめたものが本書である。

要約

本書は、優れた業績を上げていたアメリカ企業43社を調査し、そこに共通する8つの特質を明らかにした経営書である。原著は1982年に刊行された。

本書の中心にあるのは、優れた企業は、優秀な戦略や複雑な管理制度だけで成功しているのではないという考え方である。

顧客の声を聞く。社員を信頼する。小さくても、まず行動する。自社が大切にする価値観を、日々の仕事にまで浸透させる。

こうした一見当たり前に見えることを、組織全体で徹底できる企業こそが強いのである。

当時は、経営を数字や合理的な分析によって説明する考え方が強かった。本書はそれに対して、企業を動かすのは生身の人間であり、社員や顧客が感じる意味、誇り、意欲も経営の重要な要素であると訴えた。その点が、本書が画期的だった理由である。

エクセレント・カンパニーに共通する8つの特質

7Sフレームワークとの関係

8つの特質を見る前に、その背景にある考え方に触れておきたい。

著者らが在籍したマッキンゼーには、7Sフレームワークという有名な分析の枠組みがある。企業を7つの要素で捉えるもので、戦略(Strategy)、組織構造(Structure)、システム(Systems)という目に見えやすい「ハードの3S」と、価値観(Shared Values)、人材(Staff)、スキル(Skills)、スタイル(Style)という目に見えにくい「ソフトの4S」に分かれる。

それまでの経営論は、ハードの3Sを扱うものが多かった。組織図を書き換え、管理制度を整え、戦略を練る。しかし著者らは、実際に優れた企業を訪ね歩いた結果、差がついているのはむしろソフトの4Sの側だと気づく。

8つの特質は、この「目に見えにくい部分」を現場の観察によって具体的な言葉に置き換えたものだ。抽象的な理論ではなく、実際の企業がやっていたことの記述である。ここが本書の面白さであり、同時に後述する弱さでもある。

① 行動の重視

優れた企業は、とにかく動く。

多くの企業は、新しいことを始める前に延々と検討を重ねる。市場調査を行い、会議を開き、稟議を回す。慎重といえば聞こえはいいが、その間に機会は失われる。

エクセレント・カンパニーは違う。完璧な計画を待たず、まず小さく試す。試作品を作り、顧客に見せ、反応を見て直す。失敗しても被害が小さいうちに軌道修正できるからだ。

重要なのは、これが「無計画」とは別物だという点である。考えないのではなく、考えるために動く。机の上で正解を探すより、動いて得た情報のほうが正確だという判断がそこにある。

② 顧客に密着する

優れた企業は、顧客のすぐそばにいる。

顧客の声を聞く、と口で言う企業は多い。だが実際には、アンケートの集計結果を眺めるだけで終わっていることが少なくない。エクセレント・カンパニーの場合、経営陣が自ら顧客のもとへ足を運び、現場の営業やサービス担当が顧客の細かい不満を吸い上げる仕組みを持っていた。

面白いのは、革新的な製品の多くが研究所ではなく顧客との会話から生まれていたという指摘である。技術者が思いつくアイデアより、実際に使っている人が困っていることのほうが、はるかに具体的で切実だからだ。

品質やサービスへの執着も、この延長線上にある。顧客に近いほど、手を抜けなくなる。

③ 自主性と企業家精神

優れた企業は、大企業でありながら小さな会社の集合体のように振る舞う。

企業が大きくなると、意思決定は上に集まり、現場は指示待ちになる。挑戦する人間は減り、前例踏襲が安全になる。これが大企業病である。

エクセレント・カンパニーは、これを組織の作り方で防いでいた。事業を小さな単位に分け、それぞれに大きな裁量を与える。社内に「変わり者」がいることを許容し、公式のプロジェクトでない研究にも目をつぶる。

失敗への態度も特徴的だ。挑戦して失敗した人間を罰しない。罰すれば、誰も挑戦しなくなることを知っているからである。ある程度の無駄を許すことが、結果として大きな成果を生む土壌になる。

④ 〝ひと〟を通じての生産性向上

優れた企業は、現場の社員を生産性の源泉と考える。

これは道徳の話ではない。多くの企業は、生産性を上げる手段として設備投資や管理強化を選ぶ。人はコストであり、管理の対象である。しかしエクセレント・カンパニーは、人を尊重することが最も効率のよい投資だと考えていた。

社員を「従業員」ではなく「仲間」として扱う。成果を称える機会を数多く用意する。現場の提案を実際に採用する。こうした姿勢が、指示されなくても動く社員を生む。

著者が強調するのは、この尊重が形だけでは機能しないという点だ。社員は、経営者が本気かどうかを驚くほど正確に見抜く。制度としての人事施策と、日々の態度の一貫性が問われる。

⑤ 価値観に基づく実践

優れた企業には、揺るがない価値観がある。

どの企業も経営理念を掲げている。だが、額縁に入って壁に飾られているだけの理念に意味はない。エクセレント・カンパニーの価値観は、判断に迷ったときの基準として実際に機能していた。

たとえば「品質第一」という価値観が本物であれば、納期と品質が両立しない場面で、迷わず品質を選ぶ。その選択が繰り返されることで、社員は理念が本物だと理解する。

そして、この価値観を組織に浸透させるのは経営者の仕事である。著者は、優れた経営者は数字の管理者ではなく、意味の伝達者だと述べる。何度も語り、自ら体現する。地味だが、これ以外に方法はない。

⑥ 基軸から離れない

優れた企業は、自分の得意分野にとどまる。

企業が成長すると、多角化の誘惑が生まれる。成長市場に見える分野へ進出したくなる。だが著者の調査では、本業と関係の薄い分野に手を広げた企業ほど成績が悪かった。

理由は明快だ。企業の強さは、長年かけて蓄積された知識や技能に支えられている。まったく畑違いの事業では、その蓄積が使えない。素人として、その分野のプロと戦うことになる。

もちろん、まったく多角化するなという話ではない。既存の強みが活きる隣接分野への展開は、むしろ有効である。判断基準は「儲かりそうか」ではなく「自分たちの強みが通用するか」だ。

⑦ 単純な組織、小さな本社

優れた企業の組織図は、驚くほど単純である。

企業が複雑な問題に直面すると、組織も複雑になりがちだ。担当部署が増え、調整のための会議が増え、本社のスタッフ部門が肥大する。だが著者が見た卓越企業は逆だった。数万人規模の企業でも、本社は百人程度という例が珍しくなかった。

複雑な組織は、それ自体が仕事を生む。誰が決めるのかが曖昧になり、責任の所在が分散する。単純な構造のほうが、決定は速く、責任ははっきりする。

本社が小さいということは、現場に権限があるということでもある。③の自主性とは、組織構造の面で表裏一体の関係にある。

⑧ 厳しさと緩やかさの両面を同時に持つ

最後の特質は、これまでの7つをまとめる位置にある。

一見すると、これまでの話は矛盾している。価値観を徹底させながら、現場の自由を認める。厳しく管理しているのか、緩やかなのか。

著者の答えは「両方」である。ただし、厳しくする対象と緩やかにする対象が違う。価値観と原則については一切妥協しない。一方で、その価値観に沿っている限り、やり方は現場に任せる。

つまり、譲れない一点を全員が共有しているからこそ、細かい管理を手放せる。逆に、価値観が共有されていない組織では、規則で縛るしかなくなる。緩やかさは、厳しさの結果として生まれる。

本書の問題点と限界

一方で、本書をそのまま「成功企業の科学的法則」として読むのは危険である。

成功企業を後から説明している

本書は、すでに成功している企業を選び、その共通点を調べる方法を取っている。

しかし、同じ特徴を持ちながら失敗した企業が、調査の対象から外れている可能性がある。これは、成功したものだけを見て判断する「生存者バイアス」と呼ばれる問題である。

たとえば、成功企業に強い企業文化があったとしても、その文化が成功の原因だったとは限らない。

事業が成功して社員に余裕や自信が生まれ、その結果として企業文化が強くなった可能性もある。

つまり、成功と企業文化に関係があることは示せても、どちらが原因で、どちらが結果なのかは簡単には判断できないのである。

掲載企業の一部は後に低迷した

本書で優良企業として紹介された会社の中には、その後、経営不振に陥ったり、競争力を失ったりした企業もある。

著者も後年の振り返りで、紹介した企業の一部が倒産や低迷に直面したことを認めている。

どれほど優れた会社でも、永遠に優れているわけではない。

過去に成功した方法へ強くこだわるほど、新しい技術や競争相手への対応が遅れる場合もある。

「基軸から離れない」という考え方も、使い方を誤れば、変化を拒む理由になってしまう。

科学的な法則ではない

著者自身も後年、本書を経営の科学的な法則として扱うべきではなく、判断の材料として役立てるものだと説明している。また、本書の研究は厳密な実証研究というより、優れた企業について最初の仮説を示す探索的な研究だったとしている。

したがって、8つの特質をすべて実行すれば、必ず優良企業になれるわけではない。

業界、会社の規模、競争環境、技術の変化によって、必要な経営方法は異なる。

本書は正解を与える教科書というより、自分の会社を見直すための問いを与える本として読むべきである。

「自社は行動よりも会議を優先していないか」

「顧客よりも社内の事情を見ていないか」

「社員に責任だけを負わせ、権限を与えていないのではないか」

こうした問いを自分の職場に当てはめることで、本書の価値が生まれるのである。

誰に読んでほしいか

本書は、組織の中で「何かがおかしい」と感じているが、その正体を言葉にできない人に向いている。8つの特質は、その違和感に名前を与えてくれる。

  • 管理職や経営に関わる人:組織を良くしようとして、制度や仕組みばかりを増やしていないか。本書は、価値観と人の側から組織を見る視点を提供する。
  • 大企業に勤める会社員:自分の会社の意思決定が遅い、現場の声が届かないと感じるなら、その理由が構造として説明されている。愚痴を分析に変える助けになる。
  • 新規事業や企画に携わる人:「行動の重視」と「顧客に密着する」の2章だけでも読む価値がある。完璧な計画を待つ姿勢が、なぜ機会を逃すのかがわかる。
  • 経営書を批判的に読む訓練をしたい人:前項で述べた限界も含めて、成功事例研究というものの構造と落とし穴を学べる教材である。

まとめ

本書が伝えているのは、企業の強さは目に見えない部分に宿るという一点に尽きる。戦略や組織図ではなく、価値観、現場の人、そして動くことそのもの。40年以上前の本でありながら、その指摘は古びていない。

一方で、本書を法則として鵜呑みにすべきではない。掲載企業の一部が後に衰退した事実は、どんな優れた原則も環境の変化には勝てないことを示している。

ではどう読むか。8つの特質を「正解」ではなく「点検項目」として使うのがよい。自分の職場は行動しているか、顧客に近いか、価値観は本物か。答えを探すのではなく、問いを持ち帰る。それが本書の最も実践的な使い方だろう。

 

ビジネス書は、全文を一度読むより、たった一つのポイントでも毎日読み返して自分の血肉にすることが大事。響いた点があればあなたの読書メモにも蓄積を。

 

おしまい

 

 

年収は社会人の偏差値なのか

転職活動をしていると、どうしても「年収」が気になる。

もちろん、年収だけで仕事を選ぶつもりは毛頭ない。仕事内容はもちろん、知名度、成長性、働き方、会社の将来。見るべきものはいくらでもある。それでも求人票を開けば、まず年収レンジに目が行ってしまうのは事実だ。

ノーベル経済学賞受賞者である心理学者ダニエル・カーネマン教授らによる有名な研究では、一定水準を超えると収入が増えても幸福度の上昇は緩やかになるとされていて、当時の日本円にして「年収800万円前後が一つの目安」と言われた。

最近の研究では、それ以上でも幸福度は上昇するという結果も出ているようだが、少なくとも年収800万円が1,600万円になったからといって、幸福度が単純に2倍になるわけではない。

 

私自身、1,000万円を超える年収を得ているが、今の生活で「あと数百万円ないと困る」と感じる場面はほとんどない。それなら、多少年収が上がることより、面白い仕事や自由な時間を選んだほうが幸せなのかもしれない。

それでも、前職の同期で一番出世している連中が、おそらく年収1,400〜1,500万円くらいのレンジだと考えると、妙に気になる。

 

「なぜオレがあいつに年収で負けているんだ・・」

 

くだらないと思う。人と比べたところで仕方がないはずだ。しかし、年収には単なる生活費以上の意味もある。

年収は、社会人にとって大学受験の偏差値に似ていると思う。

高ければ幸せになれるわけではないし、その人の価値を表しているわけでも当然ない。それでも、自分が集団の中でどのあたりにいるのかを示す、非常に分かりやすい数字ではある。

ちなみに私の現在の年収1,200~1,300万円は、日本全体で見ればかなり上位に入る水準らしい。40歳の男性に限って見ても、ざっくり上位数%から10%以内には入ると考えられる。

それでも不思議なもので、自分より上の人間ばかりが目に入る。

全国で見れば十分高い偏差値でも、周囲が強豪校ばかりなら普通に感じてしまう。年収もおそらく同じなのだろう。

 

年収を追うこと自体が悪いわけではない。

問題なのは、「誰かより高い年収をもらうこと」を人生の目的にしてしまうことである。上には上がいる。起業家などを見たら、このゲームには終わりがない。

だから今回の転職でも、無理に年収アップだけを狙うつもりはない。まずは、現在の水準を維持する。そのうえで、自分の経験が生かせて、さらに市場価値を高められる仕事を選びたい。

他人と比べるな、とよく言う。

だが、多少の競争心まで捨てる必要はないのではないか。

大嫌いな前職の同期に負けたくない。もっと上に行きたい。

そんな感情も、40歳になった自分をまだ前に進ませてくれる燃料とできるなら、悪くはない気もする。

 

おしまい