成功本まとめシリーズ。
著者
村西とおる
職業・AV監督。1948年、福島県生まれ。1967年、福島県立勿来工業高校卒業後に上京、バー「どん底」勤務。1970年、グロリア・インターナショナル日本支社に転職し、英語の百科事典『エンサイクロペディア』のトップセールマンとなる。1978年、テレビゲームのリース業により1年半で7億円を得て、1980年にはビニール本・裏本の制作販売に転じ、北大神田書店グループ会長に就任するが、1984年に猥褻図画販売目的所持で逮捕、全財産を失う。その後、AV業界に進出して、1988年にダイヤモンド映像を設立。黒木香、松坂季実子、卑弥呼らを擁し、最盛期の年商は100億円。しかし1992年、衛星放送の投資に失敗、負債総額50億円で倒産。その後、タオル販売、蕎麦店経営、アダルトグッズ販売などを経て借金を完済、現在に至る。
要約
言わずと知れたAV界の帝王・村西とおる氏が、百科事典のセールスマン時代に習得し、全国1位の営業成績を上げるに至った技術「応酬話法」について、多くの具体例とともに解説された本。
近年は山田孝之主演の『全裸監督』などが話題を呼んだが、一時は負債総額50億円、過酷な取り立てで命の危険にさらされることもあったが、その危機を脱したのもこの応酬話法である(「はじめにーーこれがなければ死んでおりました」で詳しく記載)。
応酬話法と聞くと、詐欺師や強引なセールスマンを思い浮かべる人も多いと思うが、村西氏のそれは、相手の断り文句をきっかけに、相手の目線でメリットを提案することが重要と説く。
ポイント
1.商品よりも、自分に興味を引かせる
お客さまが質問に対して答えるということは、少なくとも興味があるから。この「興味」は、商品よりも営業マンに向けられていることが多い。人間として好意を持っているから、話に耳を傾けようとしてくれていることを理解する。よって、まず営業マンが心がけることは、お客さまに対して誠意ある人間であるという印象を与えること。
2.相手の自己承認欲求を満たす「間接否定話法」
営業マンは、人間の心の底に横たわる強い自己承認欲求を理解し、お客さまと接することが求められる。相手の立場や面子を尊重し、常に肯定的であることが必要。これを前提に、お客さまの断わりに対応していくのが「間接否定話法」。
具体的には、まずお客さまからの断わりの言葉を、素直に「そうでございますね」と受け入れることから始める。そのあとで、「でも」「しかし」「たとえば」といったソフトな言葉で反論していく。
3.同じ断り文句を繰り返す「繰り返し話法」
繰り返し話法とは、お客さまが使われた同じ断わりの言葉をそのまま会話に取り入れて、チャンスを摑む方法。たとえば、「高い」という断わり文句を聞いたら「高いですか、おっしゃる通りです」と、お客さまの言葉と同じフレーズで対応する。
お客さまの放たれた断わりの言葉を営業マンが繰り返すことで、それがどれほど刺激的な言葉であっても、緩和されたものになるという。相手の意見を致命的に受け止め、強引に説得しようとするのではなく、「高い」との断わり文句を聞いたら、「高いですか、おっしゃる通りです」と同じ言葉を繰り返すことで、お客さまは、自分の意見に理解を示してくれた、と営業マンに好印象を抱いてくれる。
そして、それ以上攻撃的な反論をしなくなる。この営業マンは自分と同じ価値観を持っている、と受け止めるから。営業マンの人間性に、誠意さえ感じるようになる。なぜなら、自分の考えを全面的に受け入れてくれたからだ。
世の中にはセールス本が溢れているが、各種ケースへの反論集はかなり珍しいと思う。営業マンならなるほどと思うポイント満載。
ビジネス書は、全文を一度読むより、たった一つのポイントでも毎日読み返して自分の血肉にすることが大事。響いた点があればあなたの読書メモにも蓄積を。
おしまい