僕が私淑している橘玲氏が新作を出版されたので、感想を書きたいと思う。
まずは、出版社の内容紹介から。
「幸福の土台」を手に入れるために必要なのは、新しい時代のルールを理解して、大事なところで正しい選択をすることだけだ。
これで人生は「攻略」できる。ベストセラー＆新書大賞受賞『言ってはいけない』の著者がはじめて若者向けに書いた新時代の人生戦略。
「人生は攻略できる」とまで言い切る、誰でもできるお金も仕事も幸せもすべてを両立する新時代の生き方とは
〈目次〉
はじめに 人生は「攻略」できる
世界編1 人生はロールプレイングゲーム
・大富豪の子どもは不幸になる？
・人生は「物語」 など世界編2 「自分らしさ」は友だちのなかでつくられる
・友達は学校でしか生まれない
・キャラちがいと自分さがし など世界編3 「好きを仕事に」の法則
・子どもの人生に子育てはたいして関係ない
・会社は社員が幸福になるための道具 など攻略編1 お金
・「自由」とは、イヤなことをイヤだといえること
・誰でも億万長者になれる社会 など攻略編2 仕事
・「サラリーマン」は日本にしかいない絶滅危惧種
・サラリーマンは世界でいちばん会社が嫌い
・「ぬるい日本」で億万長者になる など攻略編3 愛情と友情
・「幸福の資本」で人生が決まる
・来るべき時代の人生戦略 などおわりに 幸福に生きるためのヒント
この本は一言で言うと、今までの橘玲氏の著作の「まとめ本」的な作品。良くも悪くも他の著書で見たことのある話題（紹介される具体例までもほとんど同じ）が多いため、著者の本は全部読んでいるという橘玲マニアにとっては目新しい内容はほとんどないかもしれない。一方で、ネットを中心に何かと話題になっている橘玲の著作を初めて読んでみたいという方にはうってつけの一冊かと。胡散臭いタイトルではあるが、中身は極めて真っ当な本である。
本書は人生をロールプレイングゲームに見立て、前半を「世界編」、後半を「攻略編」として大きく二つのパートに分かれる。前半の世界編で自分の旅する世界（自分が生きている国・人生の目的など）について解説があり、後半でその攻略法（人生の局面ごとにすべきこと・してはいけないこと）を示すというスタイル。そのとおりやれば必ずうまくいくわけではないが、ゲームを有利に進めることはできると著者は言う。
まず、世界編の一部を紹介する。人間の可能性について述べた部分である。
ひとは無限の可能性を持って生まれてくるけど、その選択肢は年齢とともに減っていく。・・・選択肢が減っていくというのは 、「夢をあきらめる 」ことでもある。・・・でも、これはネガティブな見方だ。ポジティブに反転すれば 、選択肢が減っていくのは、「自分の好きなこと、得意なことを見つけて、それに集中していく」ということになる。
人生の選択肢が減ることをポジティブに考える非常に面白い考え方である。仕事についていうと、基本的に30代前半までに選択肢が一つに固まるという。選択肢がある20代のうちに「自分の好きなこと」を見つけるために、転職をしたり起業したり、トライ&エラーを繰り返し、自分だけが持っている「スペシャルなもの」を見つけておかないと、その選択肢はネガティブなものしか残らないというのだ。
続いて攻略編から一部引用する。お金の増やし方について述べた部分から。
収入を増やすには ３つの方法がある 。
①人的資本を大きくする
②人的資本を長く運用する
③世帯内の人的資本の数を増やす
人的資本とは「働いてお金を稼ぐ力」のことで単に労働力と言ってもいいだろう。自己啓発の名のもと①ばかりが注目される系傾向にあるが、②と③は①と同じくらいか 、あるいはそれ以上の効果があると主張する。自己啓発はうまくいくこともいかないこともあるが、②と③は確実に収入が増えて失敗がないという事実に注目するのだ。③「世帯内の人的資本を増やす」というのは、要するに共働きのことだ。夫1人が定年まで働いて、 60歳で退職して年金生活する家計と比べて、単純計算で1億4,000万円の「超過収入」を得ることができる。「生涯共働き」は最強の人生設計なのだ。
著者は本名非公開、早稲田大学早稲田大学第一文学部卒業。元・宝島社の編集者である。『言ってはいけない 残酷すぎる真実』がベストセラーとなったのは有名である。『幸福の「資本」論』『残酷すぎる成功法則』（監訳）『80's』『朝日ぎらい』など著作は多数ある。ファクト・エビデンスを重視し、幸福になるには、成功するにはどうすればいいかという視点の著作が多い印象である。小説も出版されているが、読んだことがないからわからない。
ということでまとめると、本書は橘玲の過去の著作がまとまったベスト盤とも言える本である。橘玲デビューしたい方は絶対買い！超オススメ！
おしまい
