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【書評】『カイジ「どん底からはいあがる」生き方の話』木暮太一

今日は木暮太一氏著の『カイジどん底からはいあがる」生き方の話』をご紹介。

 

 カイジ「どん底からはいあがる」生き方の話

カイジ「どん底からはいあがる」生き方の話

 

本書は著者のカイジ本シリーズの一作。同シリーズは、世の中の仕組みについて、人気マンガ『カイジ』の名シーンを取り上げつつ解説しています。お金について解説したのが一作目『カイジ「命より重い! 」お金の話』、働き方について解説したのが二作目『カイジ「勝つべくして勝つ! 」働き方の話』、そして三作目の本書は「生き方」をテーマにしています。また四作目に『カイジ「したたかにつかみとる」覚悟の話』があります。

 

さて、本書の「どん底からはいあがる」というタイトルからは、失敗した人間が一発逆転を狙うような印象に聞こえますが、そういった内容ではなく、年功序列・終身雇用が崩壊し実力社会となりつつある現代、そして機械とテクノロジーが人間の仕事を奪っていくこれからの時代をどう生きるべきかを提言しています。ちょっとタイトルと内容はずれている印象。

 

最近、経団連の会長やトヨタの社長が「終身雇用はオワコン」と最近言ったことが話題になりました。

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本書の出版は今から5年前の2014年ですが、「今まさに年功序列が崩れてきている」と明言していたり、「AI」(=本書では「テクノロジー」という表現)や「ビッグデータ」など昨今のトレンドワードについての言及があったりしてなかなか先見の明があります。著者が「ビッデータ」と間違えているあたりが、まだまだ世間に浸透していなかった時期なのでしょう。

 

 

それでは、印象に残った内容やフレーズなどをいくつかご紹介。

 

人が行動しなくなる、行動できなくなってしまう背景には社会的な構造がありました。それは大きく分けると2つあります。ひとつは、「これまで私たちを取り巻いていた〝階級〟(※年功序列や学歴主義など)の崩壊 」。もうひとつは、「減点主義」です。

階級の崩壊により実力主義に移行すると、成功者に対する妬みの感情が生まれるといいます。なぜなら階級が無い=誰もが平等な時代「自分もそうできたはず」だからです。減点主義からは「動かないのがベスト」という考え方が生まれます。こちらはわかりやすいですよね。

 

この2つの敵の倒し方は、

動いた結果として万が一失敗しても 〝元に戻るだけ 〟

という事実を思い出し、行動するしかないといいます。

 

続いて、AI時代の生き方について。

これからは、人間のライバルだけを見ていても意味がありません。人間のライバルと相撲で勝負をしていたら、機械が砲弾を撃ってきて、土俵ごと吹っ飛ばされるということになるのです。

なかなかユニークな表現ですが、言い得て妙ですよね。これからの時代意識すべきことは「機械、テクノロジーにできないことをする」ことです。聞けば当たり前ですが、なかなか普段考えている人は少ないのでは。

 

人脈とは、自分がAさんを知っていることではなく、Aさんが自分を知っていること、 Aさんが自分に一目置き、自分と関わることにメリットを感じてくれていることなのです。

著者は人生を変える大きなイベントの一つに「出会い」を挙げています。人とのつながりを「人脈」と言いますが、名刺を交換しただけで人脈などとは言ってはいけないのです。

 

これから必要なのは 、「みんなと一緒」ではなく、「自分だけ違う」です。

これも多くの自己啓発書やビジネス書で昨今散々言われていることですが、人生を変えるためには、「今までと違う考え方」や「今までと違う行動」をしなければいけません。人と同じことをしていると、なんとなく安心感がありますよね。人と違うことをすると、目立つので、とかく日本では非難の対象になることもあります。しかし「人と同じでいたい」という欲が自分を縛っているという事実を意識すべきなのです。

 

自分が居場所を複数確保することで、自分の気持ちが変わり、余裕を持つことができ、窮屈にならないようにできます。

所属社会を複数持っていれば、「自分の居場所はここにしかない」と思うことはないから、積極的にリスクを取ることができるようになるといいます。

 

大人になると、就職すべき年齢があり、さらには「転職適齢期」なるものもあります。(略)ですがそれらは、自分ではなく、他の誰かが決めたことです。みんながそれに従っているのかもしれませんが、それは関係がありません。あなたがその期日に従わなければいけない理由はないのです。

「常識にとらわれない」ことの重要性はすべての成功本に書かれています。

 

本書の後半部分には「すべては自分自身の決断の結果」と厳しいことも書かれています。しかし、現実はそのとおりだと思います。「自責マインド」で行動しないと、これからの時代を生き抜いていけません。このように認識してはじめて自分の考え方・行動・人生を変えることができると著者はいいます。

 

本書はこの言葉で締められます。

人生を変えるとは、今日を変えることなのです。そして、今日を変えるということは、今日の考え方を変えるということです。

 

他にもたくさんの人生を変えるための「考え方」が記載されていますが、キリがないので引用はこれくらいにしておきます。素晴らしい生き方指南本でした。

 

最後に興味を持った方のために著者を紹介します。木暮太一氏は学生の頃にマルクスの『資本論』とロバート・キヨサキの『金持ち父さん貧乏父さん』を読んで衝撃を受けて以来、経済学を独自に学び解説されている方です。「世の中のルールを知ることでよりよい生き方を選択できるようになる」という思想をベースにしたその経済合理的な思考法は、これからの時代を賢く生きる助けになると思います。ホリエモン橘玲らの考え方にも通ずるところがあるので、彼らが好きな人は特に相性が良いと思います。

 

 

序 章 生きたいように生きるか 死んだように生きるか
第1章 人生を変えるために倒すべき2つの敵
第2章 どん底からはいあがるために知るべきこと
第3章 自分を否定したら、人生は終わる
第4章 自分の場所で光りつづける人生を目指せ
第5章 今度こそ人生を変えるために

 

カイジ「どん底からはいあがる」生き方の話

カイジ「どん底からはいあがる」生き方の話

おしまい