人を説得する原則の10個目は「美しい心情に呼びかける」というテーマ。
英語の原書を直訳しているため、こういった少しわかりにくい表現になっているが、簡単に説明すると、「相手の良心に訴える」ということである。
このテーマについて、『人を動かす』では以下の例が挙げられている。
ノースクリフ卿というある新聞社の経営者が、ある時、公開したくない自分の写真が新聞に出ているのを見つけた。そこで、彼はその新聞の編集長に手紙を書いた。しかし、彼は「その写真が気に入らないから、新聞に発表しないでくれ」とは決して書かなかった。そうではなく、誰もが抱いている母親への尊敬と愛情に訴え「あの写真は、もう新聞に発表しないでいただきたいーー母がたいへん嫌がるものですから」と書いたのだ。
つまり、「母が嫌がること」という相手の良心が痛むことを話題にし、相手にそれを避けるように働きかけたのである。
実際に仕事で後輩を指導する時などに、僕も「相手の良心に訴える」テクニックを使うことがある。
何度言っても仕事の締切にルーズな後輩がいる。
たとえば、彼には、
いつもダンドリよく仕事してる◯◯に限って、報告が遅れるとかありえないよね!頼りにしてるぞ!(百万ドルの笑顔で)
このように切り出す。相手を信頼できる人物に仕立て上げながら、進捗を確認するのだ。
本書曰く、人間は誰でも正直で義務を果たしたいと思っていて、これに対する例外は比較的少ない。人をごまかすような人間でも、相手に心から信頼され、正直で公正な人物として扱われると、なかなか不正なことはできないのである。
人の美しい心情に呼びかける。
続いて、人を説得する原則の11番目は、「演出を考える」という話である。
人を説得する原則も、後半になるとだんだんとテクニック寄りになっていく。現代は演出の時代なので、単に事実を述べるだけでは十分でなく、事実に動きを与え、興味を引く演出しなければならないと言っている。
そして、これはビジネスに限らず、家庭生活や子供にも応用できるという話が具体例とともに紹介されている。
具体例は、試験管の中の酸の色がたちまち変わる(だが他社の薬では変わらない)制酸薬の広告や、汚れたシャツをまたたく間にきれいにしてしまう(だが他社のものでは汚れは落ちない)石鹼や洗剤の広告の話であったり、恋人にプロポーズする場合に、ただ愛の言葉を並べるだけではなくひざまずくなど、割と月並みな話が書かれている。
演出を考える。

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おしまい