一匹狼の回顧録

30代の孤独な勤め人がストレスフリーな人生を考える

激励する/喜んで参加させる

今日も『人を動かす』から。今日で最終回。 

人を変える九原則の8つ目は、「激励する」。

 

子供や夫や従業員を、馬鹿だとか、能なしだとか、才能がないとか言って罵るのは簡単であるが、向上心の芽を摘み取ってしまうことになる。だから、その逆を行くのだ。「やれば簡単にできる」と思い込ませ、相手の能力を信じていると伝える。そうすれば相手は、懸命に頑張る。

 

この回は著名人の登場はない。ダンスを習えと婚約者に言われたD・カーネギーの友人の四十の独身男の話、エリー・カルバートソン(トランプのブリッジの世界では有名な男らしい)がブリッジの達人になるまでの話、オハイオ州に済む男性の特別学級に入れられていた息子が成績優秀になるまでのエピソードなどが紹介されている。

 

「できるよ、大丈夫だよ」という、ある種根拠のない励まし。これはうちの母親が幼少期によくやった手法でもある。

「一匹狼ちゃんはハンサムで特別頭が良くて、運動ができるから」と繰り返し言われて、育てられてきた(今思い返すとちょっとキモチワルイ)。

たしかに小中学校までは勉強は余裕でできたし、スポートテストの結果もほぼ全項目で学年トップだった。だが、多分これは橘玲的にいうと遺伝的要素(両親ともに割と賢いし運動もできる)が非常に大きかったのだろう。高校になって周りが同じレベルの生徒が集まってくるとだんだんと限界が見えてきて、現実主義にならざるを得なかった。

あまり根拠のない激励は好きではないのだが、幼少期の子供を教育する術としては、一定程度効果はあると思う。

 

人を変える原則⑧
激励して能力に自信を持たせる。

 

人を変える九原則のラストは、「喜んで協力させる」。

 

これは、米国第28代大統領のウッドロー・ウィルソンの側近であったハウス大佐のエピソードがわかりやすい。

1915年、ヨーロッパは第一次世界大戦の真っ最中で、アメリカも黙って見ているわけにはいかなくなった。ウィルソン大統領は、戦争当事国の指導者たちと協議するため平和使節を派遣することにした。

平和主義を標榜する国務長官ウィリアム・ブライアンは、この役目を引き受けたがっていた。自分の名を不朽にする絶好の機会だと見てとったのだ。だが、ウィルソンはブライアンではなく、親友のハウス大佐を任命した。それを引き受けたハウス大佐には、重大な問題が残された。ブライアンの感情を害さないように注意して、彼にこのことを打ち明けねばならないのだ。ブライアンはその話を聞くと、明らかに失望の色を顔に浮かべたという。彼は、「自分が行くつもりだったのだ」と言った。そこでハウス大佐は、「大統領が今回の使節派遣を公式にやることは賢明な策ではないという意見を持っており、ブライアンが行くことになれば、世間の注目を引きすぎて、得策ではない」と伝えた。つまり、ブライアンはあまりにも大人物すぎて、この任務には相応しくないというわけだ。これで、彼もすっかり満足した。

 

また、肩書きや権威を与える方法もある。

かのナポレオン・ボナパルトは、自分の制定したレジョン・ドヌール勲章を1,500個ばらまいたり、18人の大将に〝元帥〟の称号を与えたり、自分の軍隊のことを〝大陸軍〟と呼んだりした。歴戦の勇士を〝玩具〟でだましたと非難されると、彼は答えた。「人間は玩具に支配される」。

 

本原則も、やはり「重要感を持たせる」とか「人の立場に身を置く」という人を動かす原則に則っている。やはり、本書は最初の三原則が一番大切なのだ。最後に、今一度引用しておく。手帳に書いて、毎日読み返したいものだ。

 

<人を動かす三原則>

・人の悪口と愚痴を言わない(「盗人にも五分の理を認める」)

・心から賛辞を与える(「重要感を持たせる」)

・相手の立場に立つ(「人の立場に身を置く」)

 

人を変える原則⑨
喜んで協力させる。

 

D・カーネギーの名著『人を動かす』の復習はこれでおしまい。次は、『道を開ける』を読み返してみようと思う。

 

人を動かす 新装版

人を動かす 新装版

 
 

 

おしまい