一匹狼の回顧録

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書評『会社で働く人の常識110』アラン・ションバーグ

今日もサラリーマンの処世術系の本をご紹介。

 

会社で働く人の常識110
★★★☆☆

研修では教えてくれない 会社で働く人の常識110

 

タイトルだけ見ると、サラリーマンが身につけるべき常識を紹介する本のように見えるが、その内容は「上司に好かれるための教科書」と言っていい。実は、本書の原題を直訳すると『上司の点数を稼ぐ169の方法』というタイトルで、原書の169項目の中から、日本の実情に合わないものを削除し翻訳したものとなっている。

著者のアラン・ションバーグ氏は、発行当時の2017年時点で、世界最大の人材紹介会社マネジメント・リクルーターズ・インターナショナルの共同創業者兼CEOであった方で、本書は、氏が自社の3500人の社員と全米のクライアントのCEOや人事担当役員等に行った調査をまとめた本ということだ。外国の本ではあるが、内容を読んでみると、驚くほど日本で好かれる社員像に共通している。きっと、上司に好かれる社員というのは万国共通なのだろう。

 

本書の冒頭に、「上司から高く評価されることは常に必要ですが、激変する今日のビジネス社会ではその重要性はさらに増しています。現代の労働環境では、もはや終身雇用は保障されていないからです。」という一節がある。多くの書籍が終身雇用の崩壊と個人のスキルアップ・会社との分離を結びつける中で、逆にこういう環境だからこそ、愛社精神や上司におもねる力を発揮する人が生き残るというのは、面白い視点だと思う。

「目上の人が入ってきたら起立せよ」「みずから進んで残業せよ」「上司に忠誠を誓え」「上司に叱られたら感謝せよ」など、かなり前近代的な教えが並んでいるが、自分が上司の立場になるとわかるが、好き嫌いで評価はかなり浮き沈みするということだ。いくら頭で適切でないとわかっていても、評価するのが人間である以上、これはいつの時代になっても変わらない普遍の法則なのだと思われる。

また、「ここだけの話を口外するな」とか「会社の宴会では羽目をはずすな」など、つい犯してしまいそうなミスについても言及があり、けっこう役立つ内容も多い。この辺りは実際何回か失敗してみて懲りるという側面もあるのだけど。

 

このご時世、新入社員の研修には決して使えない内容だけど、こういう社員が評価されるというのを理解する意味では一読の価値がある本かと。実際、多くのサラリーマンは業績を出すより上司に好かれるのが早いということも考えると、本書の内容に従うか否かは本人次第だけど、ゲームの攻略法として知っておいて損はないと思う。

 

おしまい