今日の書評はこの1冊。
★★★☆☆
ストーリー形式で仕事の本質に迫るアメリカ発のビジネス書のロングセラー。
シカゴに出張に来ていたうだつの上がらない35歳のサラリーマンが、吹雪で飛行機が欠航になったために、26時間空港に閉じ込められることになる。
ふてくされて空港の床に座り込んでいると、突然子供と戯れる怪しい老人に声を掛けられる。実はその老人が、巨万の富を築いた実業家マックス・エルモアで、一晩かけて対話形式で成功の条件について講義が繰り広げられる・・といったあらすじ。
2001年初版と20年前に発売された本だが、大型の書店にいけば未だにビジネス書の棚に行けば見ないことはないくらいメジャーな本である。
この本の面白いところは自己啓発書ながら従来の自己啓発書を否定しているところだ。
具体的には、
・目標設定の否定
・成功哲学(マニュアル)の否定
である。
これらの主張を本書から一部抜粋してみよう。
事業も仕事も、世の中のほかのすべてのことと同じだ。つまり、偶然の連続だってこと。多くの人が〝計画どおりの結果になるものはない〟という使い古された決まり文句にうなずくのに、相変わらず大勢の人が計画を立てることを崇め奉っている。計画立案者はもっと少なくてよくて、まぐれ当たり専門家こそもっとたくさん必要なのにね。
みんな、成功した人の右に倣えをしようとするけど、 成功するというのはね、右に倣えをしないっていうことなんだ。
彼らはね、他人を凌駕する人材になろうとしているけど、 それを他人と同じような人間になることで 達成しようとしているんだ。
本書では、目標を設定して細かく管理することや、成功者の模倣をすることを全否定している。なぜなら、「人生は思い通りにならないから」と老人エルモアは言い切る。
そんなことより、とにかく「試す」ことを続ける。試行錯誤を続けながら、手当り次第にやってみること(試行回数)が大事と言うのだ。ひたすら「試す」ことの重要性について説かれている。
ホリエモンもメルマガなどで起業に関する相談者に対しては、あれこれ考えずにまずは全部試してみることを勧めている。まあ、ホリエモンは自己啓発書全否定派だからね(笑)。
実際、大人になってから能力開発ができるかと問われると、ワタクシも明確にNoだと思っていて、処理手順であったり、思考のプロセスを変えるくらいしかわれわれにできることはないと考えている。なぜなら、知能の大半は遺伝で決まるから。
だからこそ、打席に立つ数を増やしていくことが成功率を上げる唯一の方法という本書の主張はシンプルかつ明確な論理ですね(これ、ストリートナンパにも通ずるな・・笑)。
そんな当たり前と言えば当たり前の話が続いて、あまり読んでいて面白くないのだが、当たり前のことがなかなかできないのが人間というものである。
やはり、娯楽的にワクワク感やモチベーションを与えてくれる自己啓発書の方が読んでいて楽しいというのが正直な感想ではある(ただ、啓発はできないのだろうが)。
ただ、20年前に20代・30代だった世代のおじさん達がけっこう読んでいるビジネス書になるので、内容は知っておいて損はないと思う。薄いのですぐ読めるし。
おしまい