一匹狼の回顧録

30代の孤独な勤め人がストレスフリーな人生を考える

スマホがウツを防いでいる

電車で周りを見渡すと、30人中20人はスマホをいじっている。

昔は2〜3割くらいの人は本や新聞を読んでいた記憶があるが、今や数%といったところだろう。

ある意味異様な光景ではあるが、その光景を作り出す一部は私だ。

 

大学卒業くらいまで私はかなり多感で、気分の浮き沈み(と言っても浮くことは少なく大抵沈んでいたのだが)が激しかった。

よく言われる話だが、人は何もしていない時に悩みに襲われやすくなる。

自分の中でそんな危険な空間の上位が電車の車内だった。

 

本や参考書を持ち歩いていればよいが、たまたま持っていなかったり、車内が混雑して本を開けなかったりすると、周りを見渡すしかなくなる。

特に思索にふけるタイプではなかったが、車窓から外をボケッと眺めていると、いろいろな感情が浮かび上がってくるのである。

ビルの看板に掲げられた広告に映るアイドルを見て「こんな奴がブームなのか」と疑問が浮かんだり、線路沿いの道を眺めながら「あぁ、昔クラスの友達とコーラ飲みながら歩いたっけ」と過去の記憶が蘇ったり、突然「さっき上司に言ったあのセリフはまずかったよなぁ」といった感情が飛び出てきたりする。不思議なもので、人間完全に無心になることは難しく、何かを意識的に見たり読んだりしていなければ、無意識に何かが頭に浮かぶようにできている。

そうした何気ない思いつきが何かを好転するキッカケになることもなくはなかったのだが、大抵過去の後悔や未来への不安であることが多く、電車は精神的にマイナスになる空間であった。

 

これを変えてくれたのがスマホの登場である。スマホは目の前に映る画面だけ眺めていたらよい。しかも、物理的な本と違って無限にコンテンツを提供してくれる。

そこに自分の思考を介在させる余地がないのだ。

私はスマホで読みたいもの(活字)・見たいもの(動画)・聞きたいもの(音声)を常に潤沢に準備しているので、心の空白が生じる隙がなくなった(何も考えなくてよくなった)。

これと引き換えに失ったのが、間違いなく思考と感情なのだろうが、おかげでスマホをゲットして以来、深刻にウツっぽくなったことが一度もない。

営業の仕事では思考力は優先順位の高いスキルではないし(もちろんあるに越したことはないが)、感情の起伏の激しい男なんて最悪なので実害はない。

 

逆にちょっとメンタル的にやばいな、と思ったら意図的に頭の中に情報を入れるようにすればよいということがわかる(電子書籍・ニュースアプリ・オーディオブックなどをフル活用)。空白の時間を作らないのだ。

電車に乗っていて、ふとそんなことに思いを馳せた、昭和生まれのおっさんです。

 

おしまい