一匹狼の回顧録

30代の孤独な勤め人がストレスフリーな人生を考える

通勤電車は経営道場である——大前研一に学ぶ「スキマ時間戦略思考トレーニング」

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通勤時間とは、一般的にいえば最も無意味な時間帯である。眠気まなこで改札をくぐり、スマホ片手にSNSを惰性でスクロールし、着く頃には「会社にたどり着いた」ことだけが成果という人も多いだろう。

だが、もし本気で“戦略思考”を身につけたいのなら、この「無意識の時間」をもっとも意識的に使わねばならない。


思考の師としてまず挙げたいのが、大前研一という男である。元マッキンゼーのカリスマコンサルタントであり、国家構造改革にまで意見する“日本最高の戦略家”の一人だ。彼が一貫して述べていたのは、「通勤時間をどう使うかで、人生の設計図が変わる」という至言である。

 

時間を変えることが、人間を変える

「人間が変わる方法は三つしかない。時間配分を変えること、住む場所を変えること、付き合う人を変えることだ」

——大前研一『時間とムダの科学』より

時間とムダの科学 (PRESIDENT BOOKS)

 

この言葉は、ビジネス書の格言としてよく言及されるが、実践している人間はほとんどいない。特に“時間配分”の領域において、私たちは何も変えていない。ただルーティンの上にあぐらをかき、「朝は脳が働かない」などと言い訳を並べて死んだような目で電車に揺られている。

 

大前氏は違った。移動中に企業戦略を構想し、路上の看板を見てビジネスモデルを分析し、ニュースひとつから仮説を10個立てる男であった。彼にとって通勤とは、仕事の準備ではなく「頭の稽古場」だったのだ。

 

戦略思考を鍛える、通勤トレーニングメニュー

以下に示すのは、大前氏にインスパイアされた私が提唱する“一匹狼式通勤メソッド”である。

「仮説を立てる」「思考を構造化する」「経営者視点を持つ」という、コンサルタントに不可欠な思考技術を通勤時間で叩き込む方法だ。

 

(1)新聞1本、深掘り演習

新聞やNewsPicksを1本だけ読む。大事なのは“量”ではない。“質”である。

1本の記事を読み、頭の中で次の問いを投げる。

 

・なぜこの出来事が起きたのか?(原因)
・どんな影響があるか?(影響)
・自分がこの企業の社長だったら、どう動くか?(打ち手)

 

たとえば、「日産がEVに5000億円投資」という記事を読んだとする。そして「中国EVメーカーとの競争環境」「電池原料の調達コスト」「国内サプライチェーンの維持」などの変数を因数分解し、ロジックツリーで整理する。

 

これを毎朝10分、3ヶ月続けるだけで、経営者目線の仮説構築力は格段に上がる。

 

(2)「街の風景」ビジネス観察訓練

大前氏は、街の中に教材が転がっていると説いた。たとえば、駅ナカのカフェひとつとっても、

 

・なぜこの立地なのか?
・客層は誰か?
・単価はどの程度か?
・自分ならどう利益を最大化するか?

 

という問いを立てる。たとえば、通勤途中にある無印良品の店舗を観察し、「なぜあえて改札外にあるのか」「導線上の強みは何か」「在庫は回転しているか」を考える。まるで自分がその店の戦略担当者であるかのように、だ。

 

この訓練を毎朝繰り返していると、やがて全ての街角が「ビジネスケース」に見えてくる。視界が変われば、思考も変わる。これは紛れもない真実である。

 

(3)社長ごっこ——仮想経営演習

通勤電車の中で、毎日1社を選び「俺が社長だったらどうするか」を真剣に妄想する。

三菱商事でも、ニデックでも、テスラでもいい。

 

・どんな強みがあり、何が脆弱か?(SWOT分析
・誰が競合で、どう違いを出すか?(3C分析)
・どの工程で価値が生まれ、どこがムダか?(バリューチェーン

 

こうして頭の中で経営会議を毎日開くと、不思議と「戦略的に考える癖」が身につく。たとえその戦略が現実とずれていたとしても、それは“思考”という筋肉を鍛えた証だ。

 

(4)1分プレゼン思考——構造化の訓練

ここまで考えた内容を、1分で要約する。主張→理由→具体例。この3ステップで頭の中に収める。できればスマホのボイスメモに吹き込む。聞き返して自分の論理展開が破綻していないかを確認する。

 

この訓練は、会議で発言する際にも役立つ。口を開く前に「自分は何を言いたいのか」が整理されている人間は、それだけで説得力を持つ。

 

デジタルツールとの融合:令和版・大前式の実践

かつての大前氏は、思考ノートを片手に街を歩き、ビジネスを仮説で斬っていた。

我々はそれをスマホで実現できる。

 

・ニュースを生成AIで要約→仮説→検証
・ChatGPTと「社長ごっこ」の壁打ち
・オーディオブックやYoutubeフレームワークを学びながら街歩き

 

つまり、我々には“手に持つ道具”の進化というアドバンテージがある。

にもかかわらず、思考停止のまま通勤していては、その差はむしろ広がっていくだけだ。

 

思考を鍛えられる者は、人生を設計できる者である

通勤時間は、日常に埋もれた最後のフロンティアである。

この時間を惰性で潰すか、思考の格闘場にするかで、1年後の知的筋力は雲泥の差になるはずだ。

私はこの先、通勤を「戦略の修行場」として使い続けるつもりだ。その結果、企業を見る目が変わったり、数字の裏側にある意図を読めるようになったりしたい。

すべては「頭を使う訓練」の賜物である。そしてその原点は、通勤電車の中にある。


通勤とは、最大の浪費時間であり、最大の自己投資時間である。

それをどう使うかは、すべて自分次第である。

 

おしまい