
「身体」を気にして食事や運動に気をつかう人は多い。
しかし、もっとデリケートで大切なはずの「頭脳」の調子を気にする習慣を持つ人は少ないのではないか。
では、どうやったら頭脳の調子を整えたり、高めたりできるのか。
実はシンプルで、道具などは一切必要としない。
日々の生活の中で、自分の思考に意識を向け続けること、このシンプルな方法が頭の訓練になる。
通勤時間を「脳トレの場」に変える
スマホや本に手を伸ばす前に、ぜひ試していただきたい方法がある。それは「一つの思考に集中する練習」だ。これが、思いのほか難しい。
たとえば、家を出るとき、何かテーマをセットする。その日の会議で話す内容、クライアントのメールへの返信、読んだ本の復習でも構わない。
その一つのことに集中し続ける努力をする。
すると、驚くことに1分も歩かないうちに別の雑念が入り込み、思考はあっという間に脇道へ逸れていく。特に、前から来る人をよけたり、道を曲がったりするときに意識が飛びがちだ。
大事なのは、その「逃げ出した思考」を何度でも引き戻すことだ。何回か脱線して根気良く戻す作業それ自体が、脳を鍛える行為になるのだ。
どこでもできる「思考筋トレ」
先ほど書いたとおり、集中の訓練には特別な場所や道具を必要としない。通勤電車の中でも、歩きながらでも、吊革につかまりながらでもできる。肉体のトレーニングを通勤中にやっていたらかなり危ないヤツだが、頭の中なら周囲の人に気づかれることもない。
重要なのは、意識して「集中を維持する」習慣を持つことだ。
もし、仕事や勉強などに役立つテーマに集中できれば一石二鳥だが、まずは脳を意識的に扱う感覚を持つこと自体に意味がある。これは筋トレと同じで、日々の小さな積み重ねが確実に力となる。
私自身、この練習を始めるまでは、正直「自分は思考力が弱い」と感じていた。考えごとをしていてもすぐに脇道へ逸れた。
しかし、この「集中して戻す」を繰り返しを続けていくうちに、少しずつ頭の中が整理され、アイデアが自然に浮かんでくる感覚が芽生えた。さらに、物事を筋道立てて考える力も以前より強くなったように思う。
このように、脳を鍛えるのは難しいことではない。むしろ道具も時間も要らず、日常の移動時間にすぐに取り入れられる。
思考が逸れたら戻す。その繰り返しが「脳ミソのシンプルな鍛え方」だ。
集中力は生まれつきの才能ではなく、鍛えられる筋肉のようなものだ。
今日の帰り道からでも、静かに自分の脳をコントロールする練習を始めてみてはいかがだろうか。
おしまい