現代のビジネスパーソンにとって、MBA(経営学修士)の取得はキャリアアップの一つの大きな手段である。
しかし、その内容、費用、そして本当に得られる価値について、立ち止まって考えるべきではないだろうか。
新規事業開発の部署に身を置く私としては、実践こそが全てであるという思いを強くしている。
メジャーMBAの現状とコスト
まず、国内の代表的なMBAプログラムを見てみよう。
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東京大学(エグゼクティブ・マネジメント・プログラム:EMP):経営層向けのプログラムであり、学位は得られないが、東大の知を結集した最先端の知見を得られる。期間は約7ヶ月、学費は400万円を超える。
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慶應義塾大学大学院経営管理研究科(KBS):フルタイムのMBAプログラムとして国内トップクラスの評価を持つ。期間は2年間で、学費は300万円を超える。
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グロービス経営大学院:実務家教員が多く、実践的なカリキュラムが特徴だ。学位取得コースの学費は2年間で300万円台。また、単科生として必要な科目を都度受講できるオプションもある(それでも最低数十万の出費)。
これらのプログラムは、数百万単位の費用と、場合によっては仕事を辞める、あるいは多大な時間を投じる覚悟が必要となる。
MBAの価値:ケーススタディの限界
MBAの最大のメリットは、豊富なケーススタディと、異業種交流によるネットワークの構築だと言われる。特にケーススタディは、実際の経営課題を疑似体験し、多角的な視点や意思決定のプロセスを学ぶ上で非常に有効である。
しかし、冷静に考えてみよう。ケーススタディで学ぶ知識やフレームワーク、例えば「ファイブフォース分析」や「バリューチェーン」といった基本的な経営理論は、書籍で十分深く学ぶことが可能ではないか。ドラッカーやコトラーの著作、良質なビジネス書を読み込むことで、知識基盤は十分に構築できる。
思うに、私が所属する新規事業開発の現場は、机上の理論では通用しない、生きた実践の場である。予測不可能な市場、顧客の真のニーズ、社内政治、限られたリソース—これらはMBAの仮想的なケーススタディではカバーできない、複雑でリアルな課題である。実践は会社で積み重ねることでしか得られない。
私が計画する「パーソナルMBA」スタイル
そこで私がこっそりと実践し、最良のスタイルだと確信しているのが、パーソナルMBA(独学MBA)である。
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インプットの最適化:一流のMBAスクールで推奨される必読図書リストをベースに、会計、ファイナンス、マーケティング、組織論、戦略論といったコア科目を系統的に学習する。書籍は、最も安価で質の高い教材だ。
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実践の場としての仕事:学んだ理論を、即座に現在の新規事業開発の業務に適用・検証する。戦略論のフレームワークを新規事業の計画に活かし、会計知識を予算策定に反映させる。給料をもらいながら実践するのである。
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ネットワークの再定義:異業種交流会などに高額を払う代わりに、目的を持ったプロフェッショナルに個別に会う機会を設定する。具体的な課題解決のヒントを得るためのメンター、あるいは共闘するパートナーとしての関係構築に注力する。
この「パーソナルMBA」は、数百万の費用をかけず、自らのペースで、最も実務に直結する知識と経験を選び取ることができる。体系化された知識は書籍で学び、複雑な実践は現場で行う。これが、今の私にとって最も費用対効果が高く、意義のある学びのスタイルだと改めて確信している。
おしまい